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科学エッセイのなかでは親しみやすいことからも特別な存在。科学の面白さが伝わる文面です。そのなかから一番最初に出版された『ダーウィン以来』をご紹介します。

■ダーウィン以来■

【ダーウィン以来】【パンダの親指】【ニワトリの歯】【フラミンゴの微笑】【がんばれカミナリ竜】【八匹の子豚】など書店の科学書コーナーで見覚えのある方も多いはず。エッセイ毎に読み切りなので気軽に読める

この本のエッセイは、1974^77年にアメリカ自然史博物館発行の【ナチュラル・ヒストリー・マガジン】のコラム“This view of Life”として毎月連載された。題名はエッセイのなかの一つからの引用で、エッセイ毎いろいろな話題が盛り込まれている。一般読者に、時の話題を反映したエッセイ、野球の話題なども折り込んだ魅力的な文章は人柄が反映され今もファンが多い。

「惑星、地球の歴史から社会、政治まで範囲は広いが、【ダーウィン】の進化論という共通の“糸”で結ばれている」“This view of Life”が、科学的知見の限界と教訓とを把握する助けとならんことを願い連載された。「われわれは一体なぜここに居なければならないのか」を問いつづける必然からでもある。(プロローグより)
★“This view of Life”は【種の起源】の最後の一節から引用されている。
★1977年以降も連載が続き、一度の休みもなく1984年4月号で100回。最初に挙げたエッセイ集が連載時期ごとに出版されている。惜しまれるのは、2002年5月に病に倒れ帰らぬ人となったこと。

一般書として【ワンダフル・ライフ】【人間の測りまちがい】などがあり、学者としてもサイエンスライターとしても超一流の評価がある。
ポピュラーサイエンスの啓蒙に尽力したのは、「教育により世界が変えられると信じていた」ことが大きな理由。「科学に名を借りた偏見、嘘が無視できない」こと、「科学の魅力を多くの人に知ってもらいたい」ことも理由の一つに挙げている。

科学の面白さが伝わる文面で、さらに科学の世界に引き込まれる。
科学エッセイのなかでは親しみやすいことからも特別な存在。

そのなかから一番最初に出版された『ダーウィン以来』をご紹介します。
どれもこれも引き込まれる面白さ、発見に溢れたエッセイお薦めです。


【ダーウィン以来】【パンダの親指】【フラミンゴの微笑】は文庫版になり、価格も手ごろ。

★詳細はこちら↓
ダーウィン以来

ダーウィン以来

価格:840円(税込、送料別)


スティーヴン・ジェイ・グールド著
浦本昌紀(うらもと・まさのり)・寺田鴻(てらだ・ひろし)訳
1995.09.30.発行
ハヤカワ文庫 NF196


★★★★☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価


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価格:861円(税込、送料別)







◆《感銘・共感・知見の一文》◆

○「生物の寿命を計る【惑星日】」P109
【惑星日】はすべての生物の考察で、時間を測定する方法としてふさわしいとは限らない。動物ごとの代謝や発育に基づき、相対的に測定して初めて正当性がある。小型の温血動物は、大型の温血動物より速いペースで生きる。鼓動、代謝は非常に速い。相対時間のいくつかの基準からすれば、すべての哺乳類はほぼ同じ長さ生きる。(一生の呼吸数はほぼ同じになる)

◎「“ルアー”を身に付けた二枚貝【ランプシリス・ウェントリコーサ】」P157
淡水産のイシガイ科の二枚貝【Lampsilis ventricosa】のもつ“疑似魚”。目の模様、尾ヒレのつくり、まるで本物そっくりの疑似の小魚を身につける。☆まるで“ルアー”それも精巧な細工を施した高級品!
この疑似餌を捕らえようと近づく魚に、“幼生”を放出する。魚に飲み込まれた幼生は、鰓に棲みつき成熟する。多くの二枚貝は、卵を水中に放出し体外で受精して発生をはじめるのに対し、このメスは卵を体内に持ち続け、オスが水中に放出した精子で受精し、“育児嚢”の役割のある器官で発生する。
【ランプシリス】はこの器官が疑似魚の体になっている。精巧なつくりだけでなく、魚のような動きさえする。幼生期に魚の鰓で発育するために、獲得した器官だが、ではどのように?一体全体どうやって進化?適応したのか?
ダーウィン進化論における深刻なジレンマの一例。
 
○「生物の発生と【シグモイド曲線】」 ★Keyword=【シグモイド曲線】  P194
古生物学者 J・J・セブコスキは、生物の多様性の増大を【先カンブリア紀後期】から、爆発的多様性の終わりまでの時間に対するグラフにすると、一般的な成長モデル、いわゆるS字状曲線【シグモイド曲線】に一致することを発見した。
培養基中でのバクテリアは、分裂を繰り返し増えていく、はじめはゆっくりと、ある程度の数になると指数関数的に増える。これが無限に続かないことは明らかで、スペース、養分、排泄物のため、ある一定の個体数に落ち着く。ここで指数関数的増加は天井に達し【シグモイド曲線】は完結する。
★バクテリアのコロニーの成長と生物の進化はかけ離れているが、【シグモイド曲線】状の成長はある種のシステムの普遍的な特性に当てはまる。

◎「勝ち残る理論のたどる3つの段階」P243
【ダーウィニズム】が新しい正統思想として席捲していた19世紀後半に、精鋭な反対者であった発生学者カール・エルンスト・フォン・ベーアは、「勝ち残ったすべての理論は3つの段階をとるものだ」と皮肉をこめて喝破した。
1.最初は正しくないとして退けられ
2.宗教に反するものとして拒否され
3.最後にドグマとして受け入れられる
科学者たちは、自分は前々からその正しさを理解していたと主張する。というもの。
★【種の起源】【大陸移動説】などなど、はじめは嘲笑的に扱われ、10年もして真実であることが認知されると、今度はこれを否定するものが嘲笑される。


◆《ポイントひろい読み》◆
大きさと形、【体積】と【表面積】の関係を、ヒト、昆虫、構造物で実例を上げながら比較している。
脱皮、大人と子供の差、SF映画など身近な例でナルホドと分かりやすく語る。
グールドの読みやすさ、親しみやすさが汲み取れる記事を集めました。

◎「大きさと形」P260
動物体は物理的な物体である。そのため【自然淘汰】により最も適した形態につくられている。
物体に作用する基本的な力の相対的な強さは、物体の大きさとともに一定の規則性をもって変化するので、動物も形態を規則的に変えることで対応している。
◆【体積】と【表面積】
大きさが大きくなると、体積に対する表面積の比率は減少する。
【体積】は長さの3乗に比例して増加
【表面積】は長さの2乗に比例して増加
このため、大きくなれば、体積は表面積より急速に増えていくことになる。
★大型動物の骨が、小型動物の細い骨と相対的に同じ強度をもつには、不釣り合いに太くなる必要がある。(これは【ガリレオ】により、1638年の【新科学対話】で初めて認められた。)

 昆虫:呼吸・重力
昆虫の呼吸は、肺ではなく体表面の気管から酸素を取り入れ呼吸する。このため大きくなるには、表面積を維持する必要がある。表面積は長さの2乗に比例でしか増えないので、おのずと大きさが限定されることになる。
昆虫に作用する重力は、表面付着力により簡単に相殺される。このため、放り投げたとしても空中に“浮きながら“ゆっくり着地する。体表面に作用する摩擦力が、弱い重力の影響に打ち勝つため。

 昆虫が小さいもう一つの理由:脱皮
昆虫が脱皮して新しい【外骨格】をつくるが、脱皮した後しばらくは支持構造がないため“柔らかいまま”維持しなければならない。小さな昆虫だからできる重力の世界。また近縁のエビ、カニは、水中にいるため重力がほとんどかからない世界での脱皮。

 ヒト
ヒトのような大型の動物は、相対的に【表面積】が非常に小さいので、体重に作用する重力によって支配される。
これに対し、体積に対する表面積比の高い非常に小さい動物の場合、体重は無視できる。
表面積が支配する世界に生きており、快適さ、危険の判断など我々ヒトには実感として経験できない。
★SF映画の「ミクロの決死圏」など小さくなる世界や巨人になる世界は、この大きさと形の関係が反映されていない。形態にとどまらず、運動能力も違いが出てくる。小人がつるはしを使っても、我々のような作業にならない。

 子供
ある状況下では、運動エネルギーは体長の5乗に比例して増加する。
自分の背丈の半分の子供が、高い所から落ちると、自分の半分ではなく、1/32のエネルギーで頭が地上にぶつかる。子供は“柔らかな”頭よりも、大きさにより保護されていることになる。
逆に、子供の腕力は我々が動員できるエネルギーの半分ではなく、わずかに1/32。なぐりかかられても大事に至らない。

 大人
ヒトの技能や行動は、うまく我々の大きさに調和している。
もしも、背丈が2倍になると、落下時の運動エネルギーは16^32倍、体重も8倍で脚の支えられる限度を超える。
もしも、背丈が1/2になると、大型の動物を狩るに足るだけの力で棍棒を振れなかったことになる。
(運動エネルギーは1/16^1/32
★これらのことは、ヒトの歴史的発達において基本的活動であったため、ヒトの進化の筋道はこの大きさに近くなければなし得なかったと結論付けるしかない。

 建造物
中世の教会は、大きさと形の関係について恰好の検証の場を提供している。
縮尺モデルの教会を実際の大きさで建築すると、外壁と窓の面積は長さの2乗に比例し増加するが、光が届かなければならない容積は長さの3乗に比例して増加する。このため大聖堂の内部は必然的に暗くなる。


◆《チェックポイント BEST 5》◆
ここは少し上級編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

◎「この世界はダーウィン以来変わってしまった」P15
【自然淘汰】
見かけ上は単純な理論だが、西洋思想、宗教へ及ぼす影響は、はかり知れない。
【ダーウィン】の投じた一石は、波紋のように広がり、ここを契機に世界は変わる。思想も変わる。人類思想史の“ターニングポイント”という意味合いが込められている。
【ダーウィン】の進化論 P15
1.『進化には目的がない』
  諸々の個体は、その遺伝子を代表するものが未来の世代のなかに増加するように努力する…これだけである。
2.『進化には方向性がない』  不可避的により高次の存在へ向かうのではない。
  諸々の生物は、自分たちのすむ局地的な環境によりいっそう適応するようになる…これだけである。
3.『自然を解釈するに際し、一貫して唯物論哲学を適用した』  物質があらゆる存在の基盤である。

◎「【進化(evolution)】の言葉の歴史」 ★Keyword=【evolution】 P48
【ダーウィン】【ラマルク】【ヘッケル】は、進化について論じた学者だが、意外にも代表的な著書の初版では【evolution】という言葉を使っていない。
【ダーウィン】がこの言葉を使わなかった理由は、
1.ホムンクルス説(胚は卵子、精子の中にあらかじめ閉じ込められている“小さな人間”で、ロシアの“マトリョーシカ”のように“いれこ”状になっている)のことを指す言葉としてつくられたため。ところが1859年には、この説は廃れ、【evolution】という言葉は他の表現として利用できる環境になった。
2.日常語で【evolution】という言葉は、進歩【progress】の概念と結びついていた。
★後に『変化を伴う由来』を表現する言葉として⇒進歩という意味をもつ日常語【evolution】を選んだことで誤解が生じることにもなる。
★【進化】と【進歩】が必然的につながっているとする考え方は、人間を中心に考える偏見のなかで最も悪質。なかでも、多くの人は、【進化】と【進歩】を同一視し、“改良”と思いこんでいる何らかの変化として定義してしまう。
★【種の起源】最後の最後で、しかも名詞ではなく動詞として1か所使われている。
「生命は^かくも単純な発端から^無限の形態が生じ、いまも生じつつある(have been,and are being evolved)」

◎「ヒトの【脳】【幼形成熟】」 ★Keyword=【幼形成熟】 P103
【ヒト】進化にとって、発育遅延は基本的な出来事。
哺乳類のなかでも【霊長類】にその傾向があり、ゆっくり成熟し、長く生きる。そのなかでも【ヒト】に顕著である。
【アカゲザル】の脳は、出生時に最終の大きさの 65%
【チンパンジー】では、40.5%で【ゴリラ】とともに生後1年目に70%に達する。
【ヒト】では、わずかに23%。生後3年目にして70%に達する。
★【ヒト】が最も長い乳児期、幼児期、少年期をもち、【幼形成熟的】に長期にわたり成長する動物で、生涯の30%が成長に費やされる

◎「【タケ】の開花と【周期ゼミ】」 ★Keyword=【捕食者飽食戦略】 P145
【マダケ】120年ごとに開花し結実する。1960年後半に、日本、英国、アラバマ州、ソ連など遠隔地でも同時に開花。【タケ】のほとんどが、同期に開花(15年以下は非常に少ない)する仕組みは、遺伝的体内時計に違いないとしている。
そして、光が時計の役をしているのではと思われる理由は、緯度5度以内の地域(年間を通じ1日の日照時間に差がない)に周期性のある【タケ】がないことから。
【周期ゼミ】(13年、17年の2種の周期がある)★ずれも素数、このため【素数ゼミ】とも呼ばれる。
【17年ゼミ】には個別に3種あり、地域ごと同時に発生する。
★【タケ】の種子と【セミ】が採用する戦略は非凡。非常に捕食されやすいため、非常にまれに発生し、しかも極めて大量であれば、【捕食者】は食べつくすことができない。進化物理では【捕食者飽食戦略】と呼ばれる。この仮説は実証されていないが、説明できる基準を満たしている。
★さらに、アダム・スミスが、調和のとれた経済への確実な道筋【レッセ・フェール】として、自由放任政策を唱えた時に直面した問題に類似していると指摘する。
理想的な経済は、秩序立ちバランスが取れたものと見えるが、自分自身の最大の利益のみを追求し、それ以外の道には従わない諸個人の相互作用から自然にあらわれてくるはずである。(1つの“見えざる手”の作用を反映しているだけ)

○「【ダーウィン】が説明不能としていたカンブリア紀の生物の爆発的多様化」P181
【種の起源】最終版で「この例は目下のところ説明不能としなければならない。そして、私の見解に反対する正当な論拠とされるかもしれない」と記している。
【カンブリア紀】に多くの生物が同時に発生し、しかも最初から複雑であったことが当時の化石から知られていた。現在、【先カンブリア紀】の化石、オーストラリア【エディアカラ】で発見された化石などを手に入れたが、【カンブリア紀】の爆発的多様化が解明されたわけではない。




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No title

科学と宗教の世界がほんとはそんなに違わないと思うのですが、
主張がぶつかり合うのはこれっまた人間の性でしょうか。

Re: No title

> 科学と宗教の世界がほんとはそんなに違わないと思うのですが、
> 主張がぶつかり合うのはこれっまた人間の性でしょうか。

創世記、天地創造など旧約聖書を否定することにつながるため、この辺の反対は今なお根強いようです。
科学が進歩していると思われるアメリカで、進化論ではなく、人は神の創造を信じている人の多さに驚きます。
グールドのエッセイ是非読んでみてください。ここでは紹介していませんが、『フルハウス』もお薦めです。
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☆★ 目次です! ★☆
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Dr.kusaichi

Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

植物の本、昆虫、小動物、菌類からウィルスまでいろいろ登場予定。
科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
最近話題の本も登場、その他 私の勝手にいろいろ出てきそうです。
気軽に楽しんでいただけると幸いです。

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