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『ワンダフル・ライフ』カンブリア紀に爆発的に出現した驚嘆すべき生物進化の謎を解く。グールドの魅力的解説に引き込まれるお薦めの書!

■ワンダフル・ライフ■
-バージェス頁岩と生物進化の物語-


1909年、ヨーホー国立公園のカナディアン・ロッキー山中で発見された【カンブリア紀】の化石。化石になりにくい軟体性の動物が、完璧に近い状態で発見された前例のないビックニュース!

1971年以降の詳細な研究調査により以前の解釈は覆り、常軌を逸した奇妙な生物、驚嘆すべき生物=【ワンダフル・ライフ】が浮かび上がる。【カンブリア紀】の僅か500万年の内に、以前の地層には見られない“動物群”がいきなり出現している。100点に及ぶ標本画と復元図が載っているため、この妙チクリンに感じる生物がますます【ワンダフル・ライフ】としてイメージしやすい。

著者は、本書の目的を3つあげている。
1.この再解釈の背景にある知的ドラマを記すこと
2.進化の歴史を読み解くと“ヒト”が存在するのは偶然であり、決して必然ではないことに言及すること
3.なぜこれほど重要な研究プログラムが人々の注意を喚起しなかったのか?という謎に取り組むこと

本論は、【カンブリア紀の大爆発】だが、ヒトの進化の偶然性やチンパンジーとの関係など一般に誤解されている“進化”について言及している。グールドならではの著述で、こちらの記述もナカナカ!で、平易に語られているところに好感がもてる。

『コーヒー片手の科学談議』といった感じで読める肩の凝らない珠玉の一冊、しかも蘊蓄に富み読み手を引きつける。数々のエッセイで人気あるグールドの代表作。文庫版に改定されてこれまた“特選”。



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価格:1,113円(税込、送料別)

スティーブン・ジェイ・グールド著
渡辺政隆(わたなべ・まさたか)訳
2000.03.31.文庫化
株式会社 早川書房



★★★☆☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★★ 保存版
★★★★★ 編集、構成
★★★★★ 総合評価





◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎【バージェス頁岩】 ★Keyword=【バージェス頁岩】【カンブリア紀の爆発】 P26
・このなかに封印されていた無脊椎動物群の化石から、現存する多細胞動物のすべてが【カンブリア紀】初期の僅か500万年の内に出現したことが分かる。
★この時以来新しい“門”は登場していない。
・【カンブリア紀の爆発】と呼ばれ、生物が爆発的に出現した直後(3^4,000万年後)の出そろった時期のもので、海に生息していた時代を今に伝える貴重な遺産。軟組織などの微細な部位まで保存されていることでも稀少な化石。
【先カンブリア時代】の生物が、【カンブリア紀】で出現した生物へ漸進的に複雑化したとする今までの前提とはまるで異なる。【ダーウィン】は『この事例は、現時点では説明不能としておくしかない』と認めていた。
【ハリー・ウィッティントン】は
・【バージェス動物群】の大半が未知の種であり、別の門を設ける必要があること、生物の多様さ(解剖学的デザインに関して)は、海洋に棲む現生の無脊椎動物を超えていることを明らかにした。
★多細胞生物の起源となる時代は、種が多様化し複雑さを増大させ“逆円錐形”となる出発点というのが既知の逆円錐形図。しかし【バージェス動物群】で解剖学的多様性が最大になるのは初期。その後は拡大ではなく除去により進展している。

◎【生命テープのリプレイ】 ★Keyword=【悲運多数死】P67
・生物集団はダーウィンの生存競争や適者生存以外の偶然の理由で繁栄あるいは死滅することがある。
・例えば、【バージェス頁岩】に記録された時間に戻り、【生命テープのリプレイ】をして前回と同じように進化が起るか再現してみた場合、そっくりそのまま再現すれば、起こるべくして起きたことになる。しかし、結果がまちまちでどれも実際の歴史と違うとしたら?
・著者は、従来とは異なる生命観が急浮上すると考える。リプレイするたびに全然違う経路をたどることになると力説する。
★【悲運多数死】という新しい図式の重要性が浮かび上がる。これに対し、はしご図や逆円錐形図では、この【生命テープ】問題は生じることはなく、何度繰り返しても一方向へ進化が進むことになる。

『バージェスを起点にしてテープを100万回リプレイさせたところで、ホモ・サピエンスのような生物が再び進化することはないだろう。これぞまさに、ワンダフル・ライフである』(P502)

『ホモ・サピエンスは実態であって趨勢ではない』(P565)と著者は記している。

◎「とっておきの【ピカイア】」P567
・体長50mm程の扁平な動物、近くのピカ山に因んで【ピカイア・グラキレンス】と命名された世界最古の【脊索動物】が見つかっている。現存する【ナメクジウオ】と多くの点で共通している。【脊椎動物】化石が出現するのは【オルドビス紀中期】の無顎類。類縁関係が不明な断片化石は【カンブリア紀末期】からも出土する。
・【ピカイア】そのものが【脊椎動物】の先祖というのではなく、これ以外に未発見の【脊索動物】が棲息していたに違いない。
『【ピカイア】は、我々を取り巻く偶発性という物語のなかの究極の失われた“環”である。バージェスの【悲運多数死】と最終的に起った人類の進化とを直接結びつける環なのである』(P570)
★【悲運多数死】では、自然界の法則は何一つ拠り所にならない。予測できる進化もない。解剖学や生態学の一般則に基く確率計算もない。
≪【ピカイア】がいたことも【ヒト】が存在することも共に偶発的な事件でしかない≫



◆ ポイントひろい読み BEST 5  ◆

○「軟体性動物が化石となる条件」
1.撹乱されていない堆積物中に埋葬されること
2.腐敗を促す酸素、バクテリア、腐敗肉食動物などの要因が取り除かれること
3.堆積後に、熱、圧力、破砕、浸食の影響が少ないこと
★保存される条件は、保存すべき生物が生育するには不向きな条件がある。噴火、洪水、山崩れ、など特異な条件が重なる必要がある。無酸素状態の泥炭内に運ばれ埋葬されることが軟体動物化石化の条件で【バージェス頁岩】が、一箇所に集中していることもこれを支持。

◎「誤りに満ちた『チンパンジーからヒトへの行進図』」P36^
・進化を扱ったお馴染の図。ヒトの登場は必然とする図で、サルからヒトへの進化を直線的な単一の系列に描いている。
★チンパンジーは人類の祖先ではない。
・アフリカの大型類人猿と人類の共通の先祖から進化した動物であり、進化学的にはヒトと等距離にある存在。しかし、『進歩の行進図』は規範的な表現としてよく見かける。漫画、広告、メディアで良く利用され大衆も本能的に理解してしまう。
★『進化』と『進歩』
・直線的な向上という思考では、『進化』とは『進歩』であると誤解させてしまう。

○「【カブトガニ】は生きている化石か?」P55
・アメリカカブトガニ(リムルス・ポリフェムス)の化石は見つかっていない。起源は2億年前ではなく2,000万年ほど前でしかない。
・「生きている化石」を誤解される理由は、多様化しなかったため種数が多くないことが原因。そのため初期の種と形態が似ていることがあげられる。

◎「【バージェス頁岩】からの復元」P184
◆【マルレラ】:Marrella(カンブリア紀中期の地層)
・“華麗な”という意味の【マルレラ】一番多く見つかる化石。2.5^19mm2対の長い棘(きょく)が頭部から後方へ伸び、24^26の体節からそれぞれ一対の付属肢をもつ。レース状の繊細な鰓脚があるため、“レースガニ”と呼ばれたこともある。【三葉虫】の仲間ではない。
◆【ヨホイア】: Yohoia
・棘(きょく)、突起などがなく、構造は単純に見える。頭部先端に大きな付属肢、胸腹部の付属肢は配置が奇妙で【節足動物】であるが、類縁種が見当たらない。
◆【カナダスピス】:Canadaspis
・体長75mmほどの2番目に多く発見される化石で、2枚貝のような背甲をもつ。【甲殻類】初期の【軟甲類】(カニ・エビなど)だったらしい。
◆【アイシュアイア】:Aysheaia
・外観は、現生カギムシ類に代表される【有爪類】に近いが、現生の高次分類群に納まらない。【環形動物】と【節足動物】の中間的存在。末端にある口は6^7本の触手に囲まれ、頭部付属肢に棘状の3本の枝があり、肢の先にはいくつもの爪が肢の側面には棘がある。
★【バージェス動物】の学名
・カナディアン・ロッキーで長く野外キャンプを過ごした【ウォルコット】は、インディアンが使う言葉を学名に採用している。
・【オダライ】は“円錐形の”【オパビン】は“岩の”【ウィワクシ】は“風の強い”など【アユシェアイア】【タカクカウィア】など母音や子音の重なりに特徴がある。

○「既知の動物門に分類できない8種類」P356
◆【オパビニア】:Opabinia
・体長50mm程、頭部からノズル状の器官が伸び先端は爪状の鋏、頭部に5つの眼、体節の上面に鰓がある。復元図は【バージェス頁岩】の化石のなかでもトビキリに珍妙。【節足動物】ではないらしい。
◆【ネクトカリス】:Nectocaris
・化石は雄型1つがあるだけ。首があり、前部は【節足動物】、後部は【脊索動物】からなる“キメラ”生物にみえる。
◆【オドントグリフス】:Odontogriphus
・体長60mm程度“歯の生えた謎”という意味の【オドントグリフス】で標本は雄型、雌型の1つだけ。胴体に1mm間隔の横線があり環状構造からなり、付属肢、硬組織も見つからない。U 型の口に0.5mmほどの歯が並ぶ。
◆【ディノミスクス】:Dinomischus
・体長25mm程、固着性で放射相称形、現生の海綿類、有柄ウミユリ類のような形状。コブレット形をした体型の奥に、口と肛門がある。
◆【アミスクウィア】:Amiskwia
腹部より出た1対の触手、胴部にヒレが2種類あり、遊泳していたらしい。標本数が極めて少ないことからも海底生息ではないらしい。
◆【ハルキゲニア】:Hallucigenia
・まるでSFの世界のような生物【ハルキゲニア】は、妄想(ハルーシネイション)に因む学名。
・「幻覚が生んだ生物」と呼ばれるほど奇怪で非現実的な姿。上下、前後が判断できない。
◆【ウィワクシア】:Wiwaxia
・平均体長25mm、最大で50mmの平たい楕円形をして甲と棘で覆われる。復元の難しい化石の一つであるため解剖学的特徴がつかみにくい。全体を覆う鱗片と2列に並ぶ棘の2種の骨片、腹面は海底面に接するため骨片はない。顎は歯舌(しぜつ)と呼ばれ【軟体動物】によく似ている。
◆【アノマロカリス】:Anomalocaris 発見までの経緯
・「奇妙なエビ」という意味の【アノマロカリス】。硬い器官は他の化石動物群に混在して見つかる。
★「エビのしっぽ」「【シドネユイア】の摂食用付属肢」「ぺちゃんこに潰れたナマコ」「中心に穴のあいているクラゲ」と思われていた4つの化石は、【アノマロカリス】の断片であった。クラゲとされていた【ペユトイヤ】は“口”の断片であった。
・ジグゾーパズルのように組み合わせると、1200mm以上と思われる巨大生物が姿を現すことになる。



◆ チェックポイント BEST 3 ◆

◎「進化は【系統樹】の樹形になるか?」P28
・【バージェス動物群】は、既知の門に分類できる種でも、解剖学的デザインの多様性は現生種をはるかに超える。【節足動物】の主要4グループは【三葉虫類】(絶滅)【甲殻類】(エビ・カニ)【鋏角類】(クモ・サソリ)【単枝類】(昆虫)であり、100万種あまりが記録される。
・この4グループの原始的種の化石が見つかるが、ほかにどのグループにも属さない【節足動物】が20^30種も見つかる。
・主要4グループは【甲殻類】の【カナダスピス】、【鋏角類】の【サンクタカリス】、【単枝類】の【アユシェアイア】と【三葉虫】が見つかる。
生物進化の歴史は、『少数の系統内で起る分化の歴史』であり、従来語られる『優秀さ、複雑さ、多様性などの増大の歴史』ではない。
生命は、分岐した多くの枝が“絶滅”という剪定を受けている樹木であり『予測された進歩のはしごではない』

◎「グールドの推論」P364
◆「カンブリア初期の【節足動物】はあらゆる形質が放り込まれたガラクタ箱」P364
・初期の【節足動物】の遺伝システムには、原始的なあらゆる形質を生む能力が潜んでいたため、系統ごと個別的に生じることができた。バージェス時代には、メニューリストから自由に料理を選ぶように形質を選び組み合わせることで個々の“種”を生じたのではないか。
★現生の【節足動物】が、いくつかのまとまりに分けることができる理由は2つ
1.多くの潜在的形質から、主要な形質を個々に調達する遺伝的な能力をその系統が失ったため
2.絶滅により大半の系統が失われ、系統間にそれぞれ共通する形質として分類しやすくなったため
★【デレク・ブリックス】も当時の【節足動物】について同じような言及がある。
『個々の種がユニークな形質を備える一方、共有される形質は多くの【節足動物】に共通する傾向がある。これら同時代に生息していた種間の関係は、明瞭ではなく、祖先種も知られていない』

◎「【バージェス動物群】の生態学」P376
・分類:動物(87.9%)、残りのほとんどは【藻類】
・動物化石:殻のような骨格(14%)残りは【軟体生物】
・バージェス動物群:119属140種から構成され、【節足動物】が(37%
・海底近くに生息する種が多数を占め、光合成を必要とする【藻類】が多いことから、この動物群は水深90m未満の浅海に生息していたと推測される。
★解剖学的には異質であり奇妙であるが、摂食様式や生息場所での分類は一般的なカテゴリーに納まる。【コンウェイ・モリス】
堆積物をつまんで摂取:個体数で(60%)属数で(25^30%)(大半が節足動物)
堆積物を濾過して摂取:個数ので(1%)属数で(5%)(硬組織のある軟体動物)
懸濁物摂取:個体数で(30%)属数で(45%)(大半が海綿類)
肉食・死肉食:個体数の(10%)属数の(20%)(大半が節足動物)



◇◆◇◆◇ S・J・グールドの語る科学  ◇◆◇◆◇

グールドの本は、どれも分かりやすく親しみを感じる。
そして、今まで気がつかなかった生物の不思議さや生命の深遠さが伝わってくる。

専門家ではない一般人への語りは平易であり、いつの間にか一緒に考えながら読む自分がある。
生物の本質的なテーマをコーヒー片手にくつろぎながら聞いているような居心地の良さがある。

ワンダフル・ライフは、10年振の読み返し。カンブリア紀初期のふしぎな生物が登場することは記憶していたが、最初の発見者【チャールズ・ドゥーリトル・ウォルコット】がなぜこの古代生物に陳腐な評価をしてしまったのか?について分析していたことは意外!この実に100ページにわたる記事はほとんど覚えていなかった。

あまりに常軌を逸した奇妙な生物の数々に驚き、気を取られてしまったためかもしれない。
ヒトが存在することは“必然”ではなく“偶然”であることを説いている部分は、今あらためて新鮮に感じる。

『バージェスを起点にしてテープを100万回リプレイさせたところで、ホモ・サピエンスのような生物が再び進化することはないだろう。これぞまさに、ワンダフル・ライフである』(P502)

『ホモ・サピエンスは実態であって趨勢ではない』(P565)と著者は記している。




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はじめまして、トレインギャラリーというサイトを運営している鉄道マニアです。

もちろん鉄道関係のことが好きですが(とくに鉄道の写真を撮影)、最近はたくさんの人のブログを観覧することに熱中(?)してます!!
ちなみにこのブログへは「にほんブログ村」というサイトから来ました。

それにしてもこのサイトは内容がしっかりしているうえにデザインもいいと思います!
これからもちょくちょく訪問してコメントしますね(*^^)v
よろしくお願いします。

Re: 『ワンダフル・ライフ』

トレインギャラリーさま

コメントありがとうございます。
最近は、カンブリア紀の生物関係の書籍を芋蔓式に紹介しています。
自然科学関係の気になる本が中心ですが、いろいろ記事にしたい本がたくさんあるため気の向くままに取り上げています。ご興味がありましたら是非またお尋ねください。宜しくお願いします。
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Dr.kusaichi

Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

植物の本、昆虫、小動物、菌類からウィルスまでいろいろ登場予定。
科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
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