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『人体 失敗の進化史』フライドチキンやサンマを食べても、そこに進化の痕跡を見出さずにいられない筆者。動物の身体に歴史の足跡を見つけ紐解く肩の凝らない新書。お薦めです。

■人体 失敗の進化史■


フライドチキンを食べてもサンマを食べても、そこに進化の痕跡を見出さずにいられない筆者。ヒトは前肢を【肩甲骨】で動かすが、ニワトリでは【肩甲骨】より【烏口骨】を主役にして進化したことが語られる。皿に載せられた“さんま”を前に【顎】の由来を解き明かす。どちらも、手近な材料を新しい器官に設計変更し転用してる。

両生類、爬虫類、鳥類にも【臍(へそ)】がある。これまた意外であるが、説明されればナルホドである!
左右非対称の【心臓と肺】の由来などは、太古から連綿と繰り返された進化の痕跡があり、自分の体の中にも進化の歴史を感じさせられる。

『身体の歴史が面白くて仕方ない理由は、私たちヒトをはじめとして、今でも生きている動物の身体の仕組みに、その歴史が刻まれているという事実と無縁ではない』

白紙から設計した理想的図面の上に、ヒトがつくられているわけではない。偶然の積み重ねが哺乳類を生み、強引な設計変更がサルの仲間を生み、積み上げられる勘違いによって二本足で歩き、今われわれヒトが地球にいるというのが事実だろう』(P52)

身体の歴史探し、生命誕生からヒトにいたる過去の謎を解くため、ヒトとそこに連なる動物の身体に歴史の足跡を見つけ紐解く。動物の遺体から進化の歴史を読み解く進化の解剖学である。

身近な話題を取り上げているため、自分の体の進化の痕跡や由来がわかり、ナルホド!
興味をもって読み進められる肩の凝らない新書。お薦めです。



★詳細はこちら↓

人体失敗の進化史

人体失敗の進化史

価格:777円(税込、送料別)

遠藤秀紀(えんどう・ひでき)著
2006.06.20. 初版一刷
光文社新書 258


★★★☆☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価





◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎「動物の基本設計図」P47
新しい設計は、先祖の設計図を変更するしか手はない。そのため、どこかを消して、簡単な書き足しを加える程度しか実現できない。
機械などは、白紙から設計されるが、生物の設計にはできない。生物進化を読み解くときここがポイントとなる。
≪3、4章は、この設計と変更という捉え方で書かれていて、この新書のメインテーマとでもいえる章≫

◎「骨の由来」 ★Keyword=【リン酸カルシウム】【前適応】 P55
・骨の役割は筋肉に付着面を与え、ここを起点に運動を起こすこと。
・太古の魚にとり、必要なミネラルを維持することは重要で【カルシウム】【リン酸】を供給できるか否かが生死にかかわる。この2つのミネラル供給を一挙に解決する方法として【リン酸カルシウム】を体内に備蓄。
ということは最初から骨として身体を支え、保護したり、運動の起点とする目的ではなかった。
ところが、【リン酸カルシウム】は硬く丈夫なことから“骨”としての機能が付加されることになる。さらに、陸へ進出する際、体を支え、重力に対抗する重要な支持体となる。
★もともとはミネラルの供給のための貯蔵庫が、陸上で生きるための身体の柱に変貌したことになる。
『狙いと効果が異なってしまったことが、骨の来歴の面白さだといえる』と著者。これを進化学では【前適応】と呼んでいる。

◎「両生類、爬虫類、鳥類にも【臍(へそ)】がある」P91
哺乳類のシンボル的象徴である【臍】。実は卵生の生物にも【臍】が存在している。臍帯を通じ母親と繋がっていた痕跡が【臍】のはず。
ではどうしてかと言えば、卵生の動物は【卵黄嚢(らんおうのう)】(黄身)と“臍”がつながっている。卵生の脊椎動物の【臍】のつながる先は【卵黄嚢】で、発育するための養分が蓄えられている。そして横に排泄物をためてる【尿嚢】がある。この2つを繋ぐものか【臍】の起源、切れると腹部に【臍】として残る。【臍】とは、この管を指している。



◆ ポイントひろい読み BEST 3 ◆

○「タヌキの歯から年齢を読みとる」P16
タヌキの歯は、年々カルシウムを主体とした成分が沈着する。季節により沈着の速度が違うため、“年輪”として記録される。この年輪は、薄くスライスしたものを染色し、高倍率の顕微鏡でやっと見られる微小なもの。

○「鳥類と哺乳類」P37
・以前 『【哺乳類】は【爬虫類】から生じ、恐竜や鳥とは異なる進化をしてきた』 とされていたが、爬虫類の系統進化理論が大きく変わったことに伴い、 『【哺乳類】は【両生類】から直接発生した』 と考えられるようになった。
★ニワトリに至る爬虫類の系統と、ヒトに至る哺乳類の系統は、かなり古い時代(3億年程度前)に分岐していたらしい。
・【烏口骨(うこうこつ)】と【肩甲骨】
初期の脊椎動物には【烏口骨】【肩甲骨】両方がある。
現在のヒトでは前肢を動かすのは【肩甲骨】だけだが、ニワトリでは【肩甲骨】より【烏口骨】を主役に進化。
★肩に隠された骨の履歴。進化上の分岐は勝ち負けで判断できるものではなく、いずれの系統もよく機能する肩を生みだしている。

◎「“手近な材料”からつくり上げた【顎】」★Keyword=【鰓弓(さいきゅう)】 P72
・【無顎類】のヤツメウナギ、メクラウナギに顎はないため、噛むことはできない。
・古代に魚が顎をつくる“手じかな”材料に選んだのは鰓の一部と考えられている。鰓を支えている支持骨格のある組織を【鰓弓(さいきゅう)】と呼ぶ。下顎に転用するには好都合な位置にあった。
≪呼吸器の一部が、咀嚼器のパーツとして機能することになる≫



◆ チェックポイント ◆

◎「“手近な材料”からつくり上げた【耳小骨】」P60
・音を知覚する鼓膜、しかし、微弱な振動を知覚しているのは【耳小骨】で、梃子(てこ)の原理で増幅し内耳に伝える。【槌(つち)】【砧(きぬた)】【鐙(あぶみ)】と呼ばれる骨からなる【耳小骨】、内耳に伝えられた振動はリンパ液の動きに変えられ、電気信号として脳へ伝わる。
・【耳小骨】は爬虫類では顎の一部で【槌骨】は下顎後方の関節骨、 【砧骨】は方形骨と呼ばれ上顎後方にあり、関節骨と接続して蝶番となる。
・哺乳類の【耳小骨】が、顎の部品からつくられたことは確か、ではなぜこんな進化が起きたのか。
説得力ある説は、「陸上進出した脊椎動物の頭の位置は地面に近く、空気振動から音を感知しなくても、顎から直接振動を感知できる。ところが哺乳類は、頭骨は地面から離れ高い位置にある。そこで“手近な材料”から【耳小骨】をつくり上げ感知能力を高めることになる。
≪よくこんな進化ができたと驚くばかり!の転用≫
【鐙骨】は、祖先が魚の時代に【舌顎骨】として鰓の前方で顎を支えていたが、爬虫類の段階で音を聞く増幅器の機能をもつようになる。
≪最初は呼吸器官 ⇒ 咀嚼器官の顎 ⇒ 聴覚の感覚器官と機能を変えながら進化≫

◎「左右非対称の心臓・肺」P100
・脊椎動物は、初期左右対称であったが、その後の設計変更、機能変更と改造を繰り返した結果、滅茶苦茶なほどの左右非対象になる。
その典型が、高等脊椎動物の胸部臓器。なかでも心臓は、大きな左心系と、小さな右心系から成り立ち、肺も左右で大きく異なる。
・肺の起源は魚の【鰾(うきぶくろ)】で、比重調整器。空気の出し入れは、周囲の血管が担う。このシステムは、その後の肺の機能の概念と同じで【前適応】と呼べる。
・【鰓(えら)】を使っていた時は、全身を巡った血液はすべて心臓へもどり、鰓を通して再度全身へ送ればよく、左右対称である。
しかし、 【鰾】をガス交換の供給器官にすると、左右対称のままでは、血液の一部しか流れ込まない。これを解決したのが、右側の心臓で、全身を巡った血液を肺へ送るもう一つのポンプとして付け加えられた。血液の供給源としては設計されていない【鰾】をガス交換器官の【肺】としたため血液循環機能を追加したことになる。
このため、心臓は左右非対称になり、【肺】までも左右非対称となる。




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Dr.kusaichi

Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

植物の本、昆虫、小動物、菌類からウィルスまでいろいろ登場予定。
科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
最近話題の本も登場、その他 私の勝手にいろいろ出てきそうです。
気軽に楽しんでいただけると幸いです。

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