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『コウモリのふしぎ』日本で最も種の多い哺乳類、不思議な生態、超音波を聴き裏をかく昆虫まで紹介。エコーロケーション、トーパーなど話題豊富な解説書。

■コウモリのふしぎ■


日本で最も種類の多い哺乳類は?…【コウモリ】。意外に感じる人が多いのではないでしょうか。
種数で哺乳類の 1/5 を占めるとは、これも意外! 
分類上は【翼手目】。分類名は古臭かったり、小難しい名称が多い中で、【コウモリ】の特徴を言い得ていて、気に入っている命名の一つ。

身近なところにいてもなかなか気がつかない哺乳類、調べてみるとその生態とても変わっていて面白い。そんな不思議な生態と知らなかった素顔がよく分かるお薦めの一冊です。

【エコーロケーション】【鼻葉(びよう)】【トーパー】などの用語が分かれば【コウモリ通】。哺乳類のなかでもその生態ひとつひとつに特徴がある。ここに何とも興味が尽きない魅力がある。

写真もなかなか素晴らしい!生育地の世界地図、イラスト、データも充実している。観察するためのガイドが巻末に載っているところも、好感が持てる構成。なかなか知り得なかった【コウモリ】の世界が分かりやすく紹介されている。なかでも【エコーロケーション】で昆虫を捕獲する方法の解説など特に詳しく解説されている。

惜しいのは、正誤表がはさまれていて、なんと20近くも訂正がある!
これ以外にも私が気付いたところに
(誤)新生代第三期 ⇒(正)第三紀 があり、校正がお粗末!
 知られざる進化の奇跡 ⇒ 軌跡(奇跡的な進化という意味でもなさそう。単なるイージーミス?)
 キティブタバナコウモリの前腕長が22センチ?これでは最小の哺乳類にならない?⇒2.2センチ
“テイタラク”な校正で、折角の本が“ダイナシ!”である。



★詳細はこちら↓
コウモリのふしぎ

コウモリのふしぎ

価格:1,659円(税込、送料別)

船越公威(ふなこし・きみたけ)福井大(ふくい・だい)
河合久仁子(かわい・くにこ)吉行瑞子(よしゆき・みずこ)
2007.07.25. 初版第一刷
知りたいサイエンス 014

★★☆☆☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価
但し、誤字、脱字、記載ミスなど多く、校正チェックができていない点は、評価以前である!何とも残念!





◆《感銘・共感・知見の一文》◆

◎「逆さまにぶら下がるのは、軽量化の結果」 ★Keyword=【ペリット】 P146
 後肢の鉤爪を引っ掛けて、逆さまにぶら下がる
後肢の大腿骨、筋肉が虚弱化し、膝の関節が後ろ側に曲がるため、立つ機能は失われている。
★飛行のため軽量化が避けられず、後肢の退化が進んだとみられる。
 排泄の頻度が多いのも軽量化
消化管内に食物が滞留する時間も短く【ユビナガコウモリ】で1時間、【アブラコウモリ】で45分程度で排泄。【オオコウモリ】では、果汁だけを摂り、種子、果皮、繊維成分などは【ペリット】として吐き捨てる。

◎【エコーロケーション】 ★Keyword=【エコーロケーション】 P82
 反響定位:発した高周波音(パルス)と反響音(エコー)を比較し物体の認識をすること。一部の【大コウモリ】と全ての【小コウモリ】が採用。
例えば、音速340mで、パルスとエコーの差が2ミリ秒あれば、34㎝先に物体があることが分かる。(数回^数百回発射/秒)
【エコーロケーション】のパルスは、
周波数が変調する成分【FM成分:frequency modulated】
周波数が一定な成分【CF成分:constant frequency】
から構成され、成分が単独あるいは合成され1つのパルスをつくる。
【FM成分】のうち周波数帯域が狭く時間幅が長い【狭帯域緩変調FM成分】は、エコー中に【acoustic glints(音圧や周波数の僅かな変化)】が生じ目標物の発見、認識に適している。また、ドップラー効果により、目標物との相対的な動きを把握している。

◎「【コウモリ】の超音波を聴き取り回避する昆虫」P108
 ガの仲間、ハンミョウ、コガネムシ、クサカゲロウ、カマキリ、バッタの仲間で知られている。これらの昆虫がコウモリの【エコーロケーション】パルスを聴き取ると、飛翔の方向、速度を変えて捕食から逃れる。これ以外にも飛翔の停止、さらには、妨害音を発する昆虫までいる。
★【ヒトリガ】の仲間は【クリック音】を出し、これを聞いたコウモリは捕食行動を中止する。
「超短波を探知することができる鱗翅目」P212
ジャクガ上科、ヤガ上科、スズメガ上科、メイガ上科など14科以上が知られる。耳の位置はさまざまなことから、各系統が独立して獲得した器官と考えられる。
★★ 昼行性のチョウは、【コウモリ】の捕食から逃れるため昼に活動を移す進化をしたとする説がある。【コウモリ】が【エコーロケーション】を獲得した暁新世、始新世には、【鱗翅目】が耳をもっていたことが化石から判明している。【鱗翅目】と【コウモリ】の間では太古より攻防が繰り返され、進化にも影響していると思われる。



◆《ポイントひろい読み BEST 5》◆

○「【コウモリ】基本データ(1)」P24
・1,116種202属18科(哺乳類5,416種29目) 
☆種数で哺乳類の1/5を占め、2,277種の齧歯目(ネズミ類)に次いで多い。

・日本に生息:37^40種、【コテングコウモリ】【ヒメホオヒゲコウモリ】は体重 5^8g、【クビワオオコウモリ】で400g。
・最大の【コウモリ】:【ジャワオオコウモリ】で 1,500g、翼を広げると 2mほどになる。
・最小の【コウモリ】:【キティブタバナコウモリ】で 1.5g、前腕長さ 2.2cm
★【チビトガリネズミ】とともに最小の哺乳類

・食性:約70%が食虫性、温帯に生育する種はほとんどが食虫性(クモ、節足動物の甲殻類を含む)。
・血液食の【チスイコウモリ】は、新世界の熱帯域に3種が知られるが、血液以外に昆虫も食べる。

○「【コウモリ】基本データ(2)」
「寿命」P58
一般的に哺乳類の寿命はサイズに比例するといわれるが、【コウモリ】は推定値の3倍もあり、5^15年といわれる。その上、洞窟、樹洞にねぐらがあり、天敵に襲われにくいので外的要因による死亡率が低い。

「出産」P130
【アブラコウモリ】は1^4子、多くは1産1子、他の哺乳類に比べ大きな子を生む(母体の体重の1^4割)。
★新生児の後ろ脚は、成獣の8割にまで達していて、出産直後から母親にしがみつくことができる。

「視力」 ★Keyword=【杆体】【錐体】【輝板】 P156
・夜行性の特徴として、角膜が大きく湾曲、球状のレンズ、網膜は光の明暗を感じる【杆体】は高密度で分布しているが、色を識別する【錐体】はほとんどない。角膜と厚いレンズで屈折率を大きくして多くの光を集め、網膜の外側の【輝板】で反射された光が再度【杆体】を刺激することで識別能力が高まる。
・有視界飛行の【オオコウモリ】は目が大きく、両眼の軸開度が20度程度で、立体視野が広い。網膜内に毛細血管が発達し、視細胞の活性を高めているため、うす暗い条件下での識別能力は人の2倍もある。


○「【コウモリ】基本データ(3)」
 「飛翔能力」P162
飛翔できる動物は、胴体、翼への風圧が、スピードの3乗に比例し増大するため、体を流線型にして、翼を細長くし適応している。【コウモリ】の飛翔速度は平均8.6^96.5kmと種により大きな差がある。飛翔には大量の酸素が必要で【コウモリ】の心臓の大きさは、同じ大きさの動物に比べ3倍、1回の拍動で2倍ほどの血液を送り込める。

「発声のしくみ」 ★Keyword=【鼻葉(びよう)】 P88
人間が聞くことができる周波数より高いので聞こえないが、強さは種により110デシベル以上、200回以上/秒ものパルスを発している。発生させた声を鼻から出す種と口から出す種がいるが、鼻から出す種では、鼻の周囲に皮膚、軟骨が変形した【鼻葉(びよう)】があり、声を収束させ遠くまで探索できる。

「捕獲の仕方」P97
捕獲方法は、体を上向きに傾け尾膜を丸め、翼とこの尾膜で捕獲し、尾膜のなかに頭を入れて捕食する。(口で直接捕獲していると思っていたが意外。直接捕獲には、精密な餌の定位が必要で効率的でない)


◎「温帯・寒帯に生息する【コウモリ】」P121
【翼手目】の18科中、3科の【キクガシラコウモリ科】【ヒナコウモリ科】【オヒキコウモリ科】が生息。共通する特性は、昆虫食、冬眠、年1回の発情・繁殖(昆虫が多い6^8月)。

◎【感染症】P80 
【狂犬病】【ニパウイルス感染症】【ヘンドラウイルス感染症】が知られるが、幸いにも日本では報告されていない。



◆《チェックポイント BEST 3》◆
ここは少し上級編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

◎【トーパー:torpor】 ★Keyword=【トーパー:torpor】 P172
・体温を下げ活動を停止する状態のことで、
 日周性の【日内休眠:daily torpor】
 季節性の【季節性休眠:seasonal torpor】がある。

休眠時に体温を変化させることができる動物を【異温動物】と呼んでいる。
・恒温状態を維持するためには、摂取したエネルギーの8割も必要で、体積に対する体表面積の割合が大きいほど高くなる。翼まで含めると体表面の割合が大きくなる【コウモリ】にとって、体温維持にかかるエネルギーは大変な負担。【コウモリ】の摂食量は少なく、恒温性を維持できる量の半分程度にしかならない。【トーパー】は省エネのため必須の特性。
・温帯域の【コウモリ】の冬眠は、年の1/3。体温は外気温に近く、心拍数は1/10、呼吸数は1回/分(それ以下になる種もいる)。酸素消費量も1/100以下に激減する。

◎「進化の軌跡」P193
・両極以外のすべての大陸から、化石が発見される。
・今までに発見された化石は、完璧に【コウモリ】の形態を獲得していて、中間形質をもつ化石は見つかっていない。このためどの哺乳類と近縁なのか、納得できる仮説がない。
・分子系統樹によれば、【コウモリ】が、食肉類や奇蹄類と共通の先祖をもつ可能性が示された。
・【大コウモリ】と【小コウモリ】では、中脳上丘と網膜との神経のつながり方が全く異なることから【単系統】ではないとする議論があった。しかし、現在ではすべての【コウモリ】は共通の先祖をもつ【単系統】である説が受け入れられている。
・【エコーロケーション】の起源は、【コウモリ】の共通先祖にあり、【大コウモリ】で失われたと考えられている。
・【コウモリ】の起源はローラシア大陸で、一部がゴンドワナ大陸で進化した可能性が高い。【大コウモリ】や他の大きなグループも、約5,200^5,000万年前に分岐したようで、この時期は気温が上昇し、植物の種類や密度が増し、第三紀の昆虫が全盛を迎えた時期と一致する。

◎「【コウモリ】と植物」P214
実を食べることで種子の拡散や花粉の媒介などがある。
★★ アンデス山で発見された【シタナガコウモリ属】の【Anoura fistulata】は、舌の長さ8.49cmもあり、体長の150%にもなる(普段は胸にある格納庫に納められている)。8cmもある長い筒状の花に特化し、この花の蜜を舐めることができる。

 


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Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

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科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
最近話題の本も登場、その他 私の勝手にいろいろ出てきそうです。
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