スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『生命を捉えなおす』生命は分析しても分からない。生命とは何か?時を超えて語りかける永遠のテーマ。

■生命を捉えなおす■


1978年の初版に書かれた【一部】と、増補版の初版時に書かれた【二部】から構成。30余年の時を超え語りかける名著。
生命システムには、要素の分析では理解できない面がある。『生きている状態』を新しい価値基盤として、人間と人間社会を捉えなおすことが必要で、人間と環境との調和の問題としても喚起されている」

「生命は、個体に対して考えられていたものだったが、多数の細胞にも、さらに生態系、人間社会や文明にまで固有の生命を考えることが必要になってきた」 「本書の目的は『生命とは何か』を普遍的な見方で捉えることであり、生命に関する私の見方や捉え方を書くことである」 (はしがき)より

DNA、分子遺伝学など、生物学ではミクロの世界が目立つなかで、研究も要素に合わせるように細分化してきた。こんな時期に本書を読むと、大事な視点が見落されているのではないかと考えさせられる。『生命とは何か』永遠のテーマが浮んでくる。

グラフとともに数式がいろいろ登場するが、ここで引いてしまっては本書の主題が見えてこない。こんな時は「数式があるな」くらいで流し読み、本書の主題を見失わないようにして、大局的な捉え方をしたほうが文脈が見えてくる。「ガウス分布」「ボルツマンの分布則」などいきなり出てきて面食らうばかり、このあたりで嫌気がさしたり挫折しては、折角の名著を読み損なう。

新しく書かれた【二部】は、いささか観念的。【一部】の『生命とは何か』に対する思考で感じた新鮮さ柔軟さがない。【カオス】【フラクタル】など、【一部】が書かれた後に発展した分野まで話を広げたため、それこそ混沌とした【カオス】の感がある。
【一部】に書かれた生物、生命に対する捉え方、考え方を焦点に読む方が、ポイントが明確で感銘を受けると思うのだが、如何?



★詳細はこちら↓


清水博(しみず・ひろし)著
1978.05.25.初版
1990.10.25.増補版初版
中公新書 503

★★★★☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価

 

◆《感銘・共感・知見の一文》◆

◎「分析しても自然科学的原理はわからない」P29
分析は、近代科学の最も強力な認識手段、要素に分解し原因と結果の関係を見出すと分かった気になる。ところが、『生きていること』の自然科学的原理は、分析をすすめても浮かび上がってはこない。
例として、「気体」「液体」「固体」の3つの状態にある水を分析し、要素である分子を探し当てた時、これら3態の水分子は全く同等である。物質の状態の差は、分子まで分析すると失われてしまう。
反面、酸素、鉄などのように、構成要素が異なっていても、気体、液体、固体の3態があるという物質全体に共通した性質があることも確か。これは分析的な見方ではまったくわからない。

◎「グローバルな性質の特徴は、構成要素の個性に関係しない」 ★Keyword=【非線形性】 P31
理由1)
対象の要素が、あまりに多くの原子や分子から成り立っているため、グローバルな性質が出現する。気体1㎝3は、1気圧下で10×10の20乗個の分子からなる。その分子1個を取り出してもグローバルな性質を論じることはできない。
理由2)
集まった分子の性質は、ひとつひとつの分子の性質の足し算で決まらない。分子のまとまり方や集まり方で、性質に影響してくる。
★個々の要素の性質を単純に足しても全体の性質が出てこないことを【非線形性】と呼ぶ。
・a+bの原因で、A+Bの結果になるのが【線形性】
・A+B+X のように、新たな X が加わったり、まったく違う結果になるのが【非線形性】
相乗効果はこの【非線形性】の効果で、要素の数が多い物質のグローバルな性質は【非線形性】が目立ってくる。

◎「グローバルな状態に共通する性質【相転移】」 ★Keyword=【相転移】 P36
物質や系の状態が、別の相に変わることを【相転移】と呼び、不連続に突然起こる。水が、氷に、あるいは蒸気になる。温度以外にも、濃度など物理的環境の変化でも起こすことができる。
“生”と“死”も不連続で、それぞれ一つの【相】として捉えると、つじつまが合う。
★不連続に起る理由は、各要素間に相互作用で、“ふるまい”が一緒になる傾向があるためで、言い換えれば各要素間の運動の【非線形性】。

○「【ゆらぎ】と生物進化」P232
分子レベルの【進化】については、【中立説】(木村資生)などの理論も実験的な検証が可能になってきた。DNAの構造は、シュレディンガーの考えていた固定されたものではなく、たえずランダムに揺れている。この【ゆらぎ】があるために、種の集団の中にさまざまなDNAをもつ個体が出現する。子孫に伝えられる遺伝子は一定の配列のなかを“ゆらいで”いることがわかる。
【自然淘汰】は、この【ゆらぎ】のなかから環境に適応したものを選択するため、適応できる遺伝子をもつ生物が生き残る。
★社会や国家についても同様なことが言える。独裁国や高度の管理社会は【ゆらぎ】(自由)がないため、ある時期に簡単に崩壊してしまう。



◆《ポイントひろい読み BEST 5》◆

◎「生きている状態と死んでいる状態の違い」P33
この2つの状態は大変に異なるが、その差を分子に還元することはできない。はっきり区別できる状態は、生体という分子の集まりがもつグローバルな性質であると推定される。
★分子生物学では、生物を分解し分子の活性原因となる機構を調べるが、生きている状態そのものではない。生きている状態でも同じ“ふるまい”であるという期待、前提で調べていることになる。

◎「生体の形態に見られる【動的秩序】」P98
結晶構造がもつ原子や分子:できる限り動かないとき安定⇒【静的秩序】
生体を構成する原子や分子:運動、反応、入れ替わりなどができるときだけ(生体が“生きている”ときだけ)安定⇒ 【動的秩序】

○「ウサギとカメの競争に見る【エネルギー変換効率】」P140
ウサギとカメの筋肉を比べると、速く縮めることができるのは…【ウサギ】。エネルギー変換効率は…【カメ】が優れる。
【ウサギ】:速く走れるが、エネルギー変換効率が悪いため疲れやすい
【カメ】:ゆっくりしか進めないが、エネルギー変換効率は良いため疲れにくく、いつまでも進み続けることができる

◎【動的協力性】P247
多くの要素が集まり一つの系をつくると、個々の要素に存在しなかった新しいグローバルな性質が出現してくる。生命が【動的秩序】を自己形成する能力と考えると、生体だけでなく、さまざまな系に固有の生命と生命現象を考えることができる。個々の要素の運動、状態変化が、系にマクロな秩序をつくり【動的協力性】をもつようになる。
『生きている系にはみな【動的協力性】がはたらき秩序を形成している』というのが本書の主張であると著者。

◎「自然に存在するさまざまな系」P248
自然に存在するさまざまな生きている系があるため、自然の階層構造とダイナミックスがある。環境問題は、人間社会も自然環境とともに、大きな生きた系を構成している一つの要素にすぎない。この大きな系の秩序の消滅は、系全体が死にいたることを意味している。



◆《チェックポイント》◆
ここは少し上級編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

○「フィードバック・フィードフォワード」 ★Keyword=【フィードフォワード】 P276
【フィードフォワード】:期待への制御。全体の状態が混沌とし見通せない場合、将来を知るための予知能力が必要になる。断片的につかむだけでは不十分で、将来にいたる変化の法則を捉えなければ、現在と将来の関係を知ることはできない。混沌とした情報のなかで流れをつかみ、自分の状態を変えていく必要がある。
このように混沌とした情報のなかから、法則性を見出し創造的に対応していくことは、あたらしい【セマンティック(意味論的な)情報】を生成していくことを意味している。

○「システムが完結し、内部の論理【セマンティックス】が固定されると、環境への対応力を失う」P340
生物は、複雑な環境のなかで生き続けるために、情報を生成し続ける必要があり、これができなくなれば“死”を意味することになる。






☆☆☆ ブログランキング参加中 ☆☆☆
良かったと感じた方・参考になった方、
是非クリックして投票ください!

ここをクリック↓





にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト

テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カテゴリ

☆★ 目次です! ★☆
こちらから ご覧ください ↓


プロフィール

Dr.kusaichi

Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

植物の本、昆虫、小動物、菌類からウィルスまでいろいろ登場予定。
科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
最近話題の本も登場、その他 私の勝手にいろいろ出てきそうです。
気軽に楽しんでいただけると幸いです。

検索フォーム
最新記事
リンク
Dr.kusaichi お薦めGOODS




★お薦めフィールドグッズ★

◆双眼鏡
バードウォッチングから樹の花など自然観察に最適。星空観察にも向いています。 明るく自然な視界、本格防水、メガネを掛けたままでも使いやすいお勧め品。

◆送料無料◆【新品】 ニコン 8倍双眼鏡 モナークIII 8×42D CF





◆双眼鏡
バードウォッチングから樹の花など自然観察に最適。防水タイプ。 ポケットに入る小型軽量タイプ。

★15時迄の代引注文は即日発送★ビクセン 双眼鏡 ニューアペックス HR 10×28 完全防水 (ケース...





◆ネイチャースコープ
気軽に携帯して、マイクロウォッチング、ニコンのカメラでそのまま撮影も可能。 野外観察が可能の優れもの、子供でも使える軽量、防水タイプ。

【ネイチャースコープ『ファーブル』ミニタイプ】
[メーカー取寄せ]ニコン ファーブルミニ 顕微鏡 ネイチャースコープ [Nikon NATURESCOPE FABREM...





◆フィールドスコープ
フィールドスコープの標準タイプ。軽量、防水タイプ。 グループ観察会などで、便利な1台。

Nikon ニコン III-A /フィールドスコープ 






◆ポケットルーペ
小型、軽量、高解像度。 レンズ有効径が大きく見やすい優れもの。

ニコン ニューポケットタイプルーペ 20D バーガンディ [Nikon 2・3・5x loupe 2・3・5倍 携帯 ...


 
 
 
◆コンパクトカメラ
小型、軽量、高解像度。 植物、小動物などズームマクロで雄しべ雌しべもきれいに撮れる使いやすいカメラ
 
光学10.7倍ズームを搭載、約5コマ/秒の高速連写を実現リコー CX2 シルバー 写真 




  


◆トレッキング用ストック
軽量、撮影時に一脚としてブレ防止にも使えます

 


キザキ カメラ一脚対応トレッキングポール KTE-1005C 【トレッキング用ストック】【smtb-TK】


 


ハイキング用ストック(アルミ製)【在庫切れ】LEKI レキ ULマイクロアンチSLS 1300136 550グリ...


◆【トレッキングシューズ】
軽量、通気性能、履心地


【送料無料】【20%OFF】ゴアテックスCaravan 00104 キャラバン トレッキングシューズ C-4 ブラウン 


★お薦めフィールド図鑑★


◆【声が聞こえる『野鳥図鑑』】
各ページにドットコードがあり、サウンドリーダーで再生。生きいきした鳥の声を聞けます。 地鳴、さえずりも別に再生できる優れもの。



声が聞こえる!野鳥図鑑増補改訂版





◆【声が聞こえる『カエル』】
『野鳥図鑑』に続く『カエル』良くこれだけの収録ができたと驚く内容です。 野鳥と同じサウンドリーダーで再生可能の優れもの。



声が聞こえる!カエルハンドブック





◆【日本帰化植物写真図鑑】
雑草と呼ばれる草本類の“外来種600種”が掲載され野外観察に心強い1冊。



日本帰化植物写真図鑑改訂





★樹木図鑑(携帯用ポケットガイド)

◆【庭木・街の木】ポケットガイド④
身近な庭木275種、413品種を収録。 フィールドで使いやすい。



庭木・街の木





◆【野山の樹木】ポケットガイド⑨
日本に自生する樹木372種400品種を収録。 庭木・街の木の姉妹版。



野山の樹木





★野草図鑑(携帯用ポケットガイド)

◆【街・里の野草】ポケットガイド②
四季の普通にみられる野草295種を紹介。 写真と解説がコンパクトで分かりやすい。



街・里の野草





◆【野山の野草】ポケットガイド⑩
野、山、水辺のよく見かける野草391種を紹介。 街・里の野草の姉妹版。



野山の野草





★昆虫図鑑

◆【野や庭の昆虫】
植物との関係から昆虫を表示している点が特徴。 庭、野山、作物、畑などに分けられ検索しやすい。



野や庭の昆虫





◆【昆虫の集まる花ハンドブック】
昆虫により花粉が運ばれる虫媒花を中心に142種の受粉方法、仕組みを解説。 気軽に観察と推理が楽しめる。



昆虫の集まる花ハンドブック





★こんな図鑑もありますョ!

◆【イモムシハンドブック】
チョウ類91種、ガ類135種、の合わせて226種を掲載。 幼虫、さなぎ、成虫の写真、ここまでの資料に感激。



イモムシハンドブック





◆【冬虫夏草ハンドブック】
漢方薬でよく知られる冬虫夏草。 基本から見分けまで見ているだけでも楽しい図鑑。



冬虫夏草ハンドブック




◆【ベリーハンドブック】
ツツジ科とバラ科の“ベリー”と呼ばれる実を付ける植物の図鑑。 女性に人気のベリー、こんなにたくさんあった!



ベリーハンドブック




★お薦めフィールド図鑑
                          (季節編)★


◆【日本の桜】
サクラ、栽培品種から、モモ、リンゴまでわかりやすく分類。 写真が鮮明で桜の季節に、必携の図鑑。



日本の桜増補改訂版




◆【日本のスミレ】 
山渓ハンディ図鑑⑥
可憐で人気のスミレ。しかし地域種あり、交雑種あり外来種もある。 検索表でまず見当を付けることから見分けるスミレ専門の図鑑。



日本のスミレ増補改訂




◆【日本の野菊】 
山渓ハンディ図鑑⑪
『検索チャート』『見分け方コラム』で野菊を見分ける手法を詳しく解説。 どこで見分けるかのポイントがつかめる。



日本の野菊




★じっくり調べる図鑑★
各部の詳細写真が多く分かりやすい。

◆【樹に咲く花】離弁花①

樹に咲く花(離弁花 1)改訂第3版


◆【樹に咲く花】離弁花②

樹に咲く花(離弁花 2)2版


◆【樹に咲く花】合弁花他③

樹に咲く花(合弁花・単子葉・裸子植物)改訂第3版


◆【野に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑①


野に咲く花


◆【山に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑②


山に咲く花4版


◆【高山に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑⑧


高山に咲く花


最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
管理画面へ
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。