スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『昆虫-驚異の微小脳』小さな昆虫の小さな脳。ここに隠れた驚きのシステムがある。昆虫の能力を見直すほどの世界が見えてくる。興味ある一冊。是非!

■昆虫-驚異の微小脳■ 


地球上でもっとも種が多く、繁栄している生物『昆虫』。この昆虫の脳は1立方mmにも満たない。著者はこれを『微小脳』と命名し、その知られざる機能を解き明かしていく。そこには驚くほどの巧妙なシステムがある。昆虫の繁栄はこの『微小脳』にあるとして、研究成果を通し“凄さ”と“面白さ”そして“不思議さ”を伝える一冊。

内容は、一部にやや専門的で難しいデータも含まれる。そんな箇所は流し読んで、大意をつかみたい。一般向けを心掛け、表現に気配りがあることも感じながら読んだ。何とか昆虫の世界を『脳』を通して伝えたいという著者の気持ちの伝わる新書。解説も難しくなる一歩手前で、分かりやすく表現しているところに著者の真摯な姿勢と人柄を感じる。
お薦めの一冊。


『昆虫-驚異の微小脳』
★詳細はこちら↓



水波誠(みずなみ・まこと)著
2006.08.25. 発行
中公新書 1860



★★★★☆ 難易度
★★★★☆ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★★ 保存版
★★★★★ 編集、構成
★★★★★ 総合評価



◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎【昆虫】  ★Keyword=【外骨格】 P10
・全動物種の2/3を占め、これまでに約100万種が知られるが、熱帯雨林に生息する未知の種が1,000万種を超えると推測される。
・4億年以上前のシルル紀~デボン紀に甲殻類から進化。最初のは「トビムシ」のように翅のない【無翅昆虫類】。約3億年前の石炭紀に【有翅昆虫類】が出現。「トンボ」「カゲロウ」次に「バッタ」「ゴキブリ」、ペルム紀に「カメムシ」「甲虫類」、中生代に「チョウ」「ハチ」が出現したらしい。
★古生代に出現した「メガネウラ」は、翼開長約80センチ。【外骨格】の昆虫がなぜこんなに大きくなれたのか?古生代の酸素濃度が高かったこと、競合がなかったことなど諸説ある。【恒温動物】のように運動能力や知能が高い相手が多い時代では分が悪い。
【恒温動物】は、サイズを小さくすると体温維持のエネルギー効率が悪くなるが【変温動物】の昆虫はサイズを小さくすることで活路を見出し、進化的成功を収めた。

◎ 「新生代に爆発的に増加した原因」 ★Keyword=【完全変態】【共進化】 P11
1.翅を獲得し移動能力が増加したこと
2.変態により、成長期と繁殖期を分離し、効率的資源利用ができたこと
★【完全変態】する昆虫に顕著で、【不完全変態】に比べ種数が圧倒的に多いことも“有利”である裏付け。
3.被子植物との共生関係ができたこと
「甲虫目」「チョウ目」「ハチ目」など。新生代に出現した【被子植物】と【昆虫】の関係は、蜜、花粉の提供とポリネータ(受粉媒介者)で【共進化】による爆発的な種分化が起こる。
★この3目で全動物種の50%を占める。【被子植物】は全植物種の80%を占める。共に、陸上の生態系を築き上げた主役的な存在。
★★『以上、3つの成功理由のいずれにも、神経系の働きが綿密にかかわっていることは、従来見過ごされてきた』と著者。

○「「ヒト」「昆虫」の“脳”比べ」  ★Keyword=『微小脳』 P15
・昆虫の“脳”⇒ 頭部に多数のニューロン(神経細胞)が集合した頭部神経節があり、感覚情報の統合、記憶・運動の制御を担うことで“脳”と呼ぶ。
・ニューロンの数⇒ 「昆虫」:「ヒト」= 100万:1,000億。
★著者はこのニューロンの比率を、スーパーコンピュータとノートパソコンに例える。個人ユーザーのニーズには性能は劣るが使い勝手の良いノートパソコンが圧倒的。生態系の生存競争においても、『微小脳』のほうが圧倒的に成功していると考えられはしないか?

◎「ヒトの脳と昆虫の【微小脳】比較」P278
容量の少ない【微小脳】の場合、脳へ伝達される情報は、末梢にある感覚ニューロンで取捨選択された後の情報。“粗い”情報処理というデメリットより“速い”情報処理というメリットを優先したネットワークで、昆虫にとって“速い”情報処理がいかに重要性なのかを検証している。
・【微小脳】では、単一のニューロンが情報処理の機能単位として働くため、ニューロンの働きに還元して理解できる。巨大脳の場合、単一のニューロンへ還元して理解することは難しい。
・【微小脳】の視覚系では、形態視より運動視が重視される。【巨大脳】が細かな特徴まで捉えるパターン認識とは異なる



◆ ポイントひろい読み  BEST 5  ◆

○「『ハエ』は愚かな生き物だろうか?」   ★Keyword=【解放血管系】【気門】【平均棍】 P5  
 【解放血管系】
・昆虫は、哺乳類のような【閉鎖血管系】ではなく、組織や器官が直接血液に浸される【解放血管系】。心臓に相当する【背脈管】により体内を循環。
・【気管系】は、肺もなければ、ヘモグロビンもない。体の両側にある【気門】から酸素を取り込み、直接組織へ送られる。代謝で生じる二酸化炭素もこの【気門】により排出される。

 『ヒト』に見劣りしない機能
・飛翔能力:羽ばたきは、300回/秒。飛距離は、体長の250倍/秒。
・【複眼】:視力(空間分解能)は『ヒト』の1/10×nと劣るが、時間分解能は数倍高い。
・【平均棍】:4枚の翅のうち後部の2枚が棒状に退化している。飛行機のジャイロスコープの役目を果たし、方向を維持するための安定装置として機能している。
≪こうなると“退化”と表現できない。むしろ“進化”に思えてくる≫

○「鳥の“翼”昆虫の“翅”の起源」P104
・「鳥」の翼は前肢、「昆虫」の翅は胸部の背板が伸びたもので起源が異なる。アクロバット的な飛行をする「ハエ」「ハチ」の飛行能力は人工的に模倣できていない。また、飛翔の力学の仕組は、解明されていないものが多い。

○「臭覚」P123
・雄の「カイコガ」の臭覚器官である触覚は、数分子の【性ホルモン】がでも検知する。「イヌ」の臭覚も優れているが、臭覚系のニューロン数で「イヌ」より数桁少ない。昆虫が備える能力は驚異である。
・「ゴキブリ」「ミツバチ」は、触覚を動かし匂いの位置を検知できるため、固定した位置に鼻をもつ動物に比べ、空間的に匂いを捉える能力が高い。

◎「社会性昆虫コロニーは【超固体】」  ★Keyword=【超個体】 P226
・社会性昆虫のコロニーにおける機能の分化は、多様な細胞が一つの個体を形成する多細胞生物の機能分化に似ている。
『多数の個体の分業により成立している社会性昆虫のコロニーは、それ自体が繁殖のための一つの単位である。【超個体】と呼ばれるゆえんである』
≪ヒトも60兆といわれる細胞の集合体であり、【超個体】であるととらえる考え方を思い出す。拡大解釈すれば、生態系も一つの【超個体】となる。こうなると、今度は『個』とはなんなのか…?の問題が生じてくる≫

◎「ミツバチの【8の字ダンス】」  ★Keyword=【8の字ダンス】 P126
・【8の字ダンス】で「ミツバチ」は尻を振りながら直進する。この方向が餌場の方向、真上方向を太陽方向に見立て、餌場と太陽がつくる方向を表示している。尻ふり運動の際、翅を震わせる音の持続が1秒に対して200mほどの距離。働き蜂は、暗い巣箱の中で、触覚を使い音を読み取り、ダンサーについて回りながら情報を受け取る。
★「ミツバチ」は本来、熱帯の昆虫。温帯へ進出し、大木の洞(うろ)などで営巣するようになる。しかし、太陽や外部の光が届かない。その解決策が【8の字ダンス】。太陽の方向を反重力方向に読み替えたなど、この小さな昆虫のどこにこれほどの知恵があるのだろうか。
★ダンサーが、どのように餌場を記憶してダンスに表現し、受け手はどのように記憶するのか?【微小脳】研究の最大の課題でもある、と著者。



◆ チェックポイント  BEST 5  ◆

○「昆虫:眼の仕様」  ★Keyword=【連立複眼】【重複複眼】 P39
・ 雌雄で異なる複眼比較 「ハナアブ」「イエバエ」「ミツバチ」
・雄の複眼は正面で左右が接しているが、雌は離れている。雄は、空中で交尾するため追跡行動する必要があり、左右の複眼で同時に捉え距離感を得る。
・ 画素数で比較
・「イエバエ」の複眼は左右合わせ12,000の個眼、「トンボ」の複眼は50,000の個眼(種により異なる)をもつが、デジカメの画素数に及ばない。複眼は、像も粗く、視力(2点識別能力)は0.01~0.02程度で、「ヒト」に比べかなり劣る。
★解像度だけで優劣を決められる訳ではない。個眼を増やすことで視野が広くなり、半球状の複眼をもつ「イトトンボ」は360度の視野を確保。
・ 2種類の複眼比較
・【連立複眼】:「トンボ」「バッタ」「チョウ」
個眼の直下に光受容部があるため、その個眼の光のみ受容する。シャープな像を得られるため昼行性昆虫に多い。
・【重複複眼】:「ガ」「ホタル」
レンズから離れた位置に光受容部があるため、真上の個眼だけではなく、周囲の個眼からの光も受容する。このため暗い中で光を集める夜行性昆虫に多い。

◎「昆虫:眼の能力」  ★Keyword=【時間解像度】【ちらつき融合頻度】 P48
・ 【時間解像度】比較:1秒間に何回の明暗変化を認識できるかの能力=【ちらつき融合頻度】
・「カタツムリ」:4ヘルツ/「ヒト」:15~60ヘルツ/「ハエ」:150ヘルツ
★「カタツムリ」は4回/秒以上は静止しているものと区別がつけられない。
・蛍光灯はその倍の周波数で発光するため、50ヘルツの東日本では100回/秒、60ヘルツの西日本では120回/秒点滅している。ということは、「イエバエ」には蛍光灯が、チカチカして見えることになる。
≪こんなチカチカするところによく平気でいられるなぁー…「ハエ」には不思議な「ヒト」の世界?≫
・ 色彩認知能力比較
「ミツバチ」:1個の個眼に8個の視細胞があり、紫外線340nm(2個)、青色463nm(2個)、緑色530nm(4個)のそれぞれに高感度。
「ヒト」:3種の【錐体細胞】があり、青色420nm、緑色530nm、赤色560nmに最大感度をもつ。

◎ 【第三の眼】  ★Keyword=【単眼】【松果体】 P74 
・「バッタ」「ハチ」の頭部には複眼以外に3個の【単眼】がある。昆虫の多くが3個の【単眼】をもつが、「ワモンゴキブリ」「ヤガ」は2個。「カブトムシ」などもたない昆虫もいる。
★脊椎動物も【第三の眼】(額眼/中央眼)を備えていた痕跡がある。今日【中央眼】のある動物は「ヤツメウナギ」「ムカシトカゲ」など少数派。「ヒト」などでは、1日の活動リズムの調整を司る【松果体】(内分泌器官)として内部に納まっている。
・【単眼】は明暗の変化を感知する単純な感覚器。空と大地のコントラストを感知が目的らしい。
・信号を伝える介在ニューロンの数は数十個程度で、複眼に比べ信号伝達が早いことが特徴。【単眼】は単純な情報しか感知できないが、素早い行動制御をするには圧倒的に有利。
★★『ここに“単純な生物デザイン”の良さがある。これが【単眼】デザインの本質であり、【微小脳】のデザインの本質なのかもしれない』と著者。

◎「進化系統の頂点に位置する生物」P168
・「ヒト」と「昆虫」に共通の遺伝子が次々に発見されている。(ホメオティック遺伝子)
・先カンブリア紀初期に【新口動物】【旧口動物】へ分岐、【新口動物】の頂点に「ヒト」が、【旧口動物】の頂点に「昆虫」が位置している。その2系統の頂点にそれぞれ「ヒト」と「昆虫」が位置している進化系統樹は、改めて「昆虫」が地球上で、繁栄している生物であると納得させられる。
■用語■
■ホメオティック遺伝子
発生初期の体の体制や構造などに関する遺伝子
■【旧口動物】
初期胚に形成された原口がそのまま口となる動物
■【新口動物】=後口動物
原口が肛門となり、口は別に形成される動物

◎「「アリ」「ハチ」の【定位】」  ★Keyword=【太陽コンパス】【偏光コンパス】【定位】 P244
・【太陽コンパス】を使い巣へ戻る「アリ」「ハチ」は、なんと時刻による太陽の位置関係から【定位】する。刻々と移動する太陽の位置から読み取るとは驚きである。
・さらに、太陽が出ていない時には【偏光コンパス】を利用。青空の一部さえ見えれば【定位】ができる。太陽のある方向は長波長の光に富んでいる。この偏光を感知して太陽の位置を特定。【複眼】に偏光受容領域があり、ここの紫外線受容細胞が偏光を検知しているという。



supercomputer×notebook computer  『例えの妙』  supercomputer×notebook computer

前回の『ヒトの見ている世界 蝶の見ている世界』で本書の紹介があり、以前読んだ新書を改めて読み返した。昆虫の知能を【微小脳】と称して論じ、それまで思いもよらなかった有意差や機能を知り印象に残っていた本。

著者は「ヒト」の脳をスーパーコンピュータに、「昆虫」の微小脳をノートパソコンに例える。性能は劣るが使い勝手の良いノートパソコンが量では圧倒的に普及している。生態系の生存競争においても【微小脳】のほうが圧倒的に成功していると考えられはしないだろうか?

大変に解りやすい"例え”であると同時に、今日のPCや携帯の普及した時代に良くあった技ありの“例え”。【微小脳】は粗さはあるがそれ以上に“速い”情報処理を優先したネットワーク。【巨大脳】の持ち主が、「ハエ」や「ゴキブリ」を捕えようとしても、“速さ”を優先する【微小脳】の持ち主にマンマト逃げられる。
どこか、イソップ寓話のような感じさえしてくる。



☆☆☆ ブログランキング参加中 ☆☆☆
良かったと感じた方・参考になった方、
是非クリックして投票ください!

ここをクリック↓


にほんブログ村 科学ブログ 自然科学へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

『樹の中の虫の不思議な生活』樹の中で生活する穿孔性昆虫の生活史が良く分かる。菌類やバクテリアと共生する驚きの世界がある。

■樹の中の虫の不思議な生活■
(穿孔性昆虫研究への招待)


樹の中で生活する昆虫の今まで知られていなかった生活史が良く分かる。
カミキリムシからキクイムシ、キバチ、クワガタムシも登場する。【マツノザイセンチュウ】を媒介する【マツノマダラカミキリ】やこのところ各地で被害が増えている【ナラ枯れ】をもたらす【カシノナガキクイムシ】の生態について詳しい記述がある。

【穿孔性昆虫】の多様な生態とともに“菌”との共生や【穿孔性昆虫】と【寄生バチ】の関係などが紹介されている。樹のなかの生活が見えてきたと思ったら、またまた複雑な菌類やバクテリアと共生していることがわかってきた。

これら穿孔性昆虫はセルロースやリグニンなど自分では消化できないため、菌類を利用し消化させている。また、病原力のある菌と共生することで健全木の防御システムを打破し寄生しやすい環境をつくり出している。さらに、必要な菌を体の一部につけ目的の樹に接種する昆虫の様子も詳しく書かれている。

しかし、これらの植物を摂食する昆虫は、森林生態系で重要な役割も担う。幹の内部で材を摂食するため害虫と捉えられることが多いが、枯れ木なども分解し土壌に還元していることは、森林内のリサイクルを促進する重要な一面を担う存在でもある。

題名の「樹の中の虫の不思議な生活」は一般向けを意識したようで、副題の「穿孔性昆虫研究への招待」となるといきなり難しそうなイメージが湧いてくる。各解説はそれぞれ専門の研究者が分筆。研究論文の形式で記載されている。一般向けに“翻訳”されてはいないため“学術的”“論文的”で題名の気軽さは影を潜め表紙の装丁にそぐわない。しかし、最近話題になる樹木の病虫害を通して【穿孔性昆虫】の一端を理解するにはコンパクトにまとめらお薦めの書である。



★詳細はこちら↓

【送料無料】樹の中の虫の不思議な生活

【送料無料】樹の中の虫の不思議な生活
価格:2,940円(税込、送料別)

柴田叡弌(しばた・えいいち)富樫一巳(とがし・かつみ)著
2006.09.20.第一版第一刷
東海大学出版会




★★★★★ 難易度
★★★★☆ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★★ 編集、構成
★★★★★ 総合評価

 



◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎【マツノマダラカミキリ:Monochamus alternatus(鞘翅目カミキリムシ科)】P84
・マツ科15種を摂食するヒゲナガカミキリ属の昆虫。成虫は【マツノザイセンチュウ】を伝播し、日本各地で深刻な被害をもたらしている。成虫の餌は生きた若いマツの枝の樹皮で、生きたマツがなくなると飛翔する。これに伴い【マツノザイセンチュウ】を伝播する。
・5^7月に枯れたマツから脱出して、1.5ヵ月、長い個体では6か月もマツ林内に生存する。行動は夜行性。性成熟し枯れ始めたマツに集まると、樹の幹より【モノテルペン】【エタノール】が発生し、これに成虫が誘引される。雌は一度でなく毎日少しずつ産卵する。
★成虫後に摂食しない昆虫は、卵の発生発育が蛹の時期に完了しているが、成虫後に摂食し卵を発育させる昆虫では体のサイズと生涯産卵数に正の相関がある。
・3^4齢で冬眠すると2月中旬頃成虫になるが、1^2齢で冬眠した幼虫は2回目の冬を越し2年がかりで成虫になる。
・餌とするマツの発見能力に優れること、生存率が高いことが【マツノザイセンチュウ病】被害が持続している原因となる。

◎【マツノザイセンチュウ:Bursaphelenchus xylophilus】★Keyword=【キャビテーション】
・媒介昆虫の気管内に入り込み、昆虫とともに移動する。(昆虫体内では増殖しない)
・1900年代の初めに日本国内に侵入。【マツノマダラカミキリ】1頭に20万もの線虫が確認されることもあり、マツ1本の発病に充分である。
・皮層の樹脂道内を移動。【樹脂道】は、芽でつくられる皮層内に形成されるが、形成層からつくられる二次師部には形成されない。皮層が外樹皮になると【樹脂道】は消失するため、【樹脂道】が存在するのは若い枝の内樹皮だけである。
・線虫の移動により、細胞破壊、細胞壁の傷害周皮などが起こり、増殖した線虫が傷害周皮の外へ出てくる。木部柔細胞の脂質を消失し、気体が入ることで仮道管内の水分の流通が阻害される。この結果【キャビテーション】を起こし萎凋症状を呈する。
・材線虫病が発生すると6km/年の速さで広がることが観測されている。

◎【養菌性キクイムシ】★Keyword=【養菌性】【アンブロシア菌】 P161
・鞘翅目ゾウムシ上科に属し、ナガキクイムシ科とキクイムシ科を含むゾウムシ類から派生したと考えられている。樹皮下穿孔性と養菌性の2つに分けられる。
・【穿孔性昆虫】の多くは幼虫が坑道を掘るが、【キクイムシ類】は最初に成虫が坑道を掘り産卵し、幼虫がが成虫となるまで共存する。【養菌性キクイムシ】は、辺材に穿孔し坑道内に繁殖する【アンブロシア菌】と称される糸状菌や酵母を食べる。(キクイムシの幼虫はセルロースやリグニンの分解酵素を持たない)
★真社会性のある種がオーストラリアに存在 ⇒ 子が坑道内にとどまり他の子の世話をし、親は女王として産卵に専念する。半倍数性の一群が確認されている。⇒未受精卵は雄、受精卵は雌になる。雌の体内に精子を貯蔵し、アリ同様に性比をコントロール。
・広葉樹(被子植物)に適応し利用できる樹種の範囲が広い。熱帯雨林で優先的なことも、種の多様性が高い場所での適応に有利。
(注):海水の木材に棲みつく“キクイムシ”は甲殻類ワラジムシの俗称。ホームセンターに並ぶ「キクイムシ殺虫剤」はヒラタキクイムシ(ナガシンクイムシやシバンムシに近縁)に対しての薬剤。【養菌性キクイムシ】はこれらとは別の甲虫。

「養菌方法」★Keyword=【マイカンギア】P168
・【マイカンギア】と呼ばれる共生菌の胞子を貯蔵する器官を口腔や背中、前肢の袋に備えているキクイムシが数種確認されている。【マイカンギア】内では出芽と分裂により繁殖るため胞子のみが観察される。
・【アンブロシア菌】の大多数は不完全菌で、【キクイムシ】の種ごとに主要な菌が異なる。また幼虫の発育とともに菌相が移り変わる。坑道で菌を摂取する位置も種ごとに異なる。
・樹皮下穿孔性のキクイムシの数種は、菌を持つダニと複雑な相互関係が調べられているが、役割は解明されていない。

◎【ブナ科樹木萎凋病】★Keyword=【カイロモン】【集合フェロモン】【マスアタック】P190
・【カシノナガキクイムシ:Platypus quercivorus】は【ブナ科樹木萎凋病】の原因となる【ナラ菌】を媒介する。
繁殖の確認されている樹種はブナ科に限られるが、樹液流出の多いブナなどでは繁殖できない。穿孔と枯死の確認された属は、コナラ属・クリ属・シイ属・マテバシイ属(ブナ属は穿孔のみ確認)
・ナガキクイムシ科に属しほぼ全種が養菌性で、一夫一婦制の【亜社会性昆虫】で、雌雄共同で子育てをする。
・夜明け後に脱出して午前中飛翔する。穿孔から脱出したオスは、新たな寄主に穿孔する。寄主を見つける手掛かりは、嫌気性代謝の結果生じる【エタノール】で【カイロモン】として働く。穿孔後【フェロモン】を発散し異性を誘引する。
・1921年に新種として発表された昆虫で、東南アジアに広く分布。雌の前胸の背の部分に5^10個の円孔からなる【マイカンギア(菌嚢)】がある。雄が寄主を見つけ穿孔し雌と交尾。雌は坑道を延長して産卵する。
穿孔の数は大径木ほど多く、また幹下部ほど多い。
長い坑道を掘る必要があるために大径木を、菌の生育のため含水率の高い幹下部が選ばれる。
・両性に対して【集合フェロモン】を発散することにより【マスアタック】を起こし寄主の抵抗力を破壊する。
■用語■
■フェロモン:同種個体間に作用する生化学的物質
■アレロケミカル:異種個体間で作用する生化学的物質。以下のように細分される。
カイロモン:発信者(不利)、受信者(有利)
アロモン:発信者(有利)、受信者(不利)
シノモン:発信者・受信者(共に有利)
アンタイモン:発信者・受信者(共に不利)

「共生菌」P192
・病原力のある菌と共生することで健全木の防御システムを打破し寄生する。【ナラ菌】などの病原力を利用。(針葉樹ではヤツバキクイムシが、青変菌の病原力を利用し針葉樹の抵抗力を低減させている)
・養菌性キクイムシの餌となる菌類は、セルロース分解能も必要で、病原力ある菌類とともに共生する。【マイカンギア(菌嚢)】は、酵母菌を含む多種の菌が確認されている。これは異なる樹種でも生育できる菌がいれば、繁殖領域を拡大できる可能性が内在すると考えられる。



◆ ポイントひろい読み BEST 5 ◆

○「【穿孔性昆虫】の仲間」P2
鞘翅目(しょうしもく)
【カミキリムシ科】【ゾウムシ科】【キクイムシ科】【ナガキクイムシ科】【タマムシ科】
膜翅目(まくしもく)
【キバチ科】
鱗翅目(りんしもく)
【コウモリガ科】【ボクトウガ科】【メイガ科】【ハマキガ科】【スカシバガ科】
双翅目(そうしもく)
【タマバエ科】

○「分類」P3
摂食部位による分類
・樹皮下昆虫:内樹皮(師部)を摂食【キクイムシ類】
・材穿孔性昆虫【キバチ類】

寄生力による分類
・【一次性昆虫】:健全木、時に衰弱木に寄生⇒食葉性昆虫、吸汁性昆虫【カミキリムシ】
・【二次性昆虫】:健全木に寄生不可、衰弱木だけに寄生。多くがここに含まれる【キクイムシ類】
・【腐生昆虫】:動植物の遺体から養分を摂る⇒シロアリ、クワガタムシなど

○【スギカミキリ:Semanotus japonicus(鞘翅目カミキリムシ科)】★Keyword=【一次性昆虫】【二次性昆虫】 P15
・幼虫はスギ・ヒノキの樹幹を穿孔し材質を低下させる【一次性昆虫】。⇒【はちかみ】被害
・孵化幼虫は、生きているスギの樹幹内で外樹皮から形成層を通過する際に樹脂により死に至る。孵化幼虫が内樹皮に穿孔する早春は、樹脂道の形成が遅いため生存率が高くなる。樹脂の出ない伐採後のスギの場合、2週前に伐採した丸太で86%が成虫になったが、4週前以前に伐採した丸太では成虫になれない。樹脂による死亡はないが、栄養不足(窒素含有が低くなる)により死亡したとみられる。
【スギカミキリ】は【一次性昆虫】であり、【マツノマダラカミキリ】は【二次性昆虫】で樹脂の影響を受けにくい。【スギカミキリ】の産卵数が多いのもこのためで、集中的な分布は、親が脱出した木に産卵する方が生育率が高くなるためと思われる。
・植林後10^20年後のスギ林で高密度になる。理由は、若いスギは外樹皮が未発達で内樹皮が薄く栄養不足、老木では【傷害樹脂道】が広く形成されるため幼虫の死亡率が高くなるため。
・【スギカミキリ】の寄生バチによる死亡率は、生育しているスギでは見られないが、樹勢が弱った伐採木で顕著となる。健全木に産卵することで寄生バチの被害を回避しているといえる。

○【ヒノキカワモグリガ:Epinotia granitalis(ハマキガ科)】★Keyword=【樹脂道】【傷害樹脂道】 P66
・鱗翅目の【穿孔性昆虫】は、コウモリガ科・ハマキガ科・ボクトウガ科・スカシバ科・メイガ科・ヒラタモグリガ科・ハモグリ科・キハダガ科の一部の種で見られる。
・【ヒノキカワモグリガ】の幼虫が穿孔する部分は、幹だけではなく、葉、枝にも及び特異的。スギ・ヒノキ・ヒノキアスナロ・サワラ・コノテガシワ・ニオイヒバ・ネズミサシなどの健全木に穿孔し、材が変色せせるため商品価値が下げる。
・5^7月の1回/年発生し、針葉内に潜り込み葉を枯らす。2齢幼虫は主枝に移動し、内樹皮と形成層を摂食する。3^4齢になるにつれ、針葉⇒分枝基部⇒主枝基部へ穿孔場所を変えながら育つ。穿孔場所を変えることで樹脂による防御作用を避け10カ月近く樹木内で生活する。(【樹脂道】生成は摂食後15日以上要する)
・スギとヒノキで比較すると、スギの方が内樹脂にフェノール・タンニンの量が多く【傷害樹脂道】形成日数も短いため、スギを穿孔した幼虫の生体量は小さい。
・寄生バチ、病原微生物はいくつか指摘されているが、不明な点が多く今後の解明に期待とある。

○【オオゾウムシ:Sipalins gigas】P108
・ゾウムシ上科はゾウムシ科、キクイムシ科など15科からなる鞘翅目のなかの大きなグループ。多くの種はサトウキビ、ヤシ類、バショウなど単子葉類の生きた組織を摂食する。
・【オオゾウムシ】は、マツ類・スギ・ヒノキ・サワラ・モミなど針葉樹、クリ・カシワ・ナラ類・カシ類・ブナ・ニレ・サクラ・ヤナギ類など広範囲の樹種を加害する。貯木場などで材に穴をあける害虫として古くから知られるが、実態はよく解明されていない。
・幼虫は、材を摂食するが、栄養価が低く消化も困難である。【オオゾウムシ】が生息する材は湿っていることから、坑道内に発生する糸状菌を食べている可能性がある。
★【オオゾウムシ】が繁栄する理由は、マツ材線虫病により【オオゾウムシ】の生育に適した枯死木が大量に発生していること、広範囲の樹種に棲みつくこと、産卵期間が長いことがあげられる。



◆ チェックポイント BEST 5 ◆

○「【穿孔性昆虫】の特徴」P8
・【穿孔性昆虫】最大の特徴は、産卵された幹以外には移動することができないこと。チョウの幼虫のように動き回ることができない。
・衰弱木に寄生する【穿孔性昆虫】は衰弱木を探す必要があり予測が困難なこと、健全木に比べ栄養面で劣ること、幼虫の移動が困難なことから、サイズに差に大きな異変が生じる。
★樹木の防衛機構:針葉樹の樹脂により成虫や卵は死んでしまう。
★辺材を利用する【穿孔性昆虫】は微生物と共生し、幼虫は菌により変質した辺材を摂食する。
例1)【キバチ類】⇒【アミロステレウム属菌】
例2)【養菌性キクイムシ】⇒【アンブロシア菌】

◎「針葉樹の防御システム【樹脂道】」★Keyword=【エピセリウム細胞】【カルス】 P30
・生育している針葉樹に寄生昆虫が少ない理由は【樹脂道】から樹脂を滲出するためで、一般に“ヤニ”と呼ばれる物質。主要成分は、多様な【テルペン類】。揮発性の精油(テレビン油)と不揮発性のロジンに大別される。殺虫作用、抗菌作用、摂食阻害作用があり、粘性により侵入生物を封じることで防御している。
■用語■
■傷害樹脂道
ヒノキが傷害を受けると、前年と前々年の年輪内の柔細胞が肥大、分裂して【エピセリウム細胞】に分化し、この細胞間に樹脂が分泌される。2週^1か月後には、【傷害樹脂道】となり樹脂が滲出し樹脂嚢を形成する。
■正常樹脂道
傷害、虫害に関係なく常在する樹脂道で、マツ属でとくに発達している。スギは通常樹脂道は存在しないが、傷害に反応して【傷害樹脂道】を形成する。
■カルス(癒傷組織)
摂食などで形成層が破壊されると、形成層の細胞、内樹皮と木部の柔細胞が分裂して【カルス】を形成する。【カルス】は発達して傷害部分を覆い形成層の連続性を回復する。

◎「【穿孔性昆虫】の天敵:寄生バチ」P124
・寄生バチは最終的に寄主を殺すことから【捕食性寄生】と呼ばれる。寄生する場所から内部寄生性と外部寄生性に分けられる。外部寄生性の場合、雌親は寄主に毒液を注入し麻痺させるが、内部寄生の場合は幼虫がある大きさになるまで生かすことが多い。
・【穿孔性昆虫】の寄生バチの大半は外部寄生である。
★寄生バチの歴史は、原始的なキバチが林内に同居する昆虫に外部寄生したことから始まったとする説がある。
「寄主生息場所への誘因」★Keyword=【フラス(幼虫の排泄物)】【α‐ピネン】【エタノール】 P127
・樹皮下穿孔性のキクイムシ成虫の寄生バチは、寄主の集合フェロモンにより誘引され、キクイムシ幼虫の寄生バチは、キクイムシの摂食でマツから放出される揮発性物質【α‐ピネン】に強く誘引される報告が北米にある。
・国内で使われる誘引トラップは、【α‐ピネン】【エタノール】により【穿孔性昆虫】および捕食性天敵を誘引している。ある程度成長した幼虫に産卵する寄生バチは、寄主の【フラス】が誘因に関係していると考えられる。また食葉性昆虫の寄生バチの場合は、視覚により寄主を見つけている。

○【キバチ】★Keyword=共生菌【アミロステレウム:Amylostereum laevigatum】 P146
・ミツバチ・スズメバチなどの細腰亜目と違い腰にくびれがない広腰亜目に属する。日本に生育する【キバチ亜科】は針葉樹を【ヒラアシキバチ亜科】は広葉樹を加害する。
・主に辺材を摂食するが、辺材は葉・実・形成層に比べ栄養価が少なく分解しにくい。ここでのキーワードは菌との共生である。伐採後2カ月を経過した材での発生は稀で、新鮮な材から共生菌の【アミロステレウム】が高い割合で見つかる。(2カ月以上経過すると共生菌以外の糸状菌が繁殖するため)
・被害はスギ・ヒノキの小口を“星形”に変色する。
【キバチ亜科】
・多くの【キバチ】は担子菌【アミロステレウム】を産卵管の基部にある【菌嚢:マイカンギア】に蓄え、【ミューカス】と呼ばれる粘着物質とともに材内部に産卵する。【キバチ幼虫】は、この菌により変化した材を摂食する説と、菌の酵素によりセルロースやリグンンを分解し消化する説がある。
・【キバチ】は、天敵の寄生バチや寄生性線虫により、7割も死亡している報告がある。寄生バチは共生菌の匂いをたどり【キバチの幼虫】に寄生する。
・共生菌は種ごとに増殖可能な樹種が異なり、健全木の中では1年程度しか生きられない。また、ほかの菌が繁殖していると生育できない。このため【キバチ】は、枯死したての木や倒れたばかりの木に産卵するようになったと思われる。
木材輸出は、生物の移動能力をはるかに超え、天敵とのバランスを崩すため【キバチ】の大発生を起こす。

○「腐朽形態で生育種類が異なる【クワガタムシ】」P216
【褐色腐朽菌】:ツヤハダクワガタ・マダラクワガタ
★リグニンが未分解のため窒素含有量が少なく成長が阻害される。このため、共生微生物や消化酵素がはたらいている可能性が高い。
【白色腐朽菌】:多くのクワガタムシが利用。オオクワガタ・コクワガタ・ノコギリクワガタ・ミヤマクワガタなど。
【軟腐菌】:コルリクワガタ・ニセコルリクワガタ
「木材腐朽菌」P214
・木材腐朽は、腐朽菌の種類により【褐色腐朽】【白色腐朽】【軟腐朽】の3つに分けられる。
【褐色腐朽】は、主成分のセルロース・ヘミセルロースが分解され、リグニンが残るため褐色を呈する。標高の高い針葉樹により多く発生。(サルノコシカケの仲間による場合が多い)
【白色腐朽】は、3つの主成分が分解され白色を呈する。ブナ、クヌギなど広葉樹に多く、褐色腐朽より発生率が高い。(代表はカワラタケ)
【軟腐朽】は、水や湿度の高い土の中で発生する特殊な腐朽で、3つの成分が分解される。
★【褐色腐朽菌】【白色腐朽菌】は担子菌類で、子実体を形成するが、【軟腐菌】は子嚢菌類と不完全菌類。



∥◇∥◇∥ 昆虫と菌類 ∥◇∥◇∥

「穿孔性昆虫」の生活の場は直接目に触れることがないため、よくわからなかった世界。というより今でも良く分からない部分の多い世界である。それに加えて、「共生菌」。これも顕微鏡でのぞく世界で、キノコのような子実体は別にしてこれまた直接見ることが困難な世界。

木材を食料とするには、分解の難しいセルロースやリグニンを分解しないことには養分として摂取できない。ウシやシロアリがバクテリアと共生して、他力にて分解吸収していることはよく知られているが、カミキリムシやキバチ、ゾウムシとなると、どう共生しているのか見当がつかない。本書でも、「今後の研究を待つ」記述にしばしば出逢う。

それにしても【養菌性キクイムシ】は体に【マイカンギア】と呼ばれる共生菌の胞子を貯蔵する器官を備えているなど驚きである。正に“センス・オブ・ワンダー”である。

このところ、クヌギやコナラなど雑木林の樹木に被害が多発している。雑木林を放置したため、大径木が増え、これを起点に大繁殖しているようである。しかし、この昆虫の存在は、以前から知られており、雑木林で大径木は伐採し被害を抑えていた先人の知恵があったと聞く。雑木林の放置とともに、先人たちの知恵も置き去りにしてしまった“ツケ”ではないだろうか。



☆☆☆ ブログランキング参加中 ☆☆☆
良かったと感じた方・参考になった方、
是非クリックして投票ください!

ここをクリック↓


にほんブログ村 環境ブログ 自然保護・生態系へ
にほんブログ村

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

『スズメバチ』秋は屋外で刺傷被害が多発する。実体験豊富な観察記録から生活史や習性が見えてくる。駆除するだけが対応策ではない。

■スズメバチ■


副題に《都会進出と生き残り戦略》とある。
【スズメバチ】の魅力に惹かれた著者の【スズメバチ】の側からの観察研究記録である。

床下にもぐり【スズメバチ】を生きたまま巣ごと採取する場面から始まる。社会性ある昆虫であり、人を寄せ付けない存在が著者を惹きつけてやまない。小学校の教諭をしながらの【スズメバチ】研究の集大成。採取・飼育などいろいろエピソードも盛り込まれ、実体験の観察記録である。

【スズメバチ】の習性は多様で、他の種の巣に侵入し女王蜂を殺して入れ替わる【クロスズメバチ】、夜間に活動する【ヤミスズメバチ】、セミを主な餌にする【モンスズメバチ】、世界最大種で働き蜂(40mm)・女王蜂(45mm)もの大きさがある【オオスズメバチ】は、攻撃性、毒性も強力。他のスズメバチを集団で襲う。
著者が【スズメバチ】の虜になっているのもこの多様な魅力にとりつかれたためとある。

「獰猛であり、人間を襲う」「殺人蜂」
⇒「二度目に刺されると死に至る」
⇒「危険であり、すぐに駆除しなくてはならない」
ととらえるのは、【スズメバチ】本来の行動が理解できていないことが原因で、飛んでくるだけで必要以上の恐怖に陥りやすい。人の方が襲撃のきっかけをつくっていたり、習性を知らないために興奮させていることを認識する必要がある。

「昆虫界のライオン」とも称され、食物連鎖の頂点にいる【スズメバチ】。この生態系があることで豊かな自然が安定しているのも事実。【スズメバチ】が毒針を持ち人を刺すことだけをとらえて、駆除することは安定した自然を破壊することにつながる。さらに、駆除が発生を高める一因になっていると著者は指摘する。



★詳細はこちら↓

【送料無料】スズメバチ増補改訂版

【送料無料】スズメバチ増補改訂版
価格:2,100円(税込、送料別)

中村雅雄(なかむら・まさお)著
2007.07.25.初版第一版(増補改訂版)
株式会社 八坂書房




★★★☆☆ 難易度
★★★★☆ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★☆☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価

 



◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎「【スズメバチ】の生活史」P21
◆活動期
・活動ピークは7^8月の真夏と思いがちだが【キイロスズメバチ】【コガタスズメバチ】【オオスズメバチ】などはその後も続く、女王蜂の寿命が長いと12月にまで活動が続くこともある。
・巣は、育房(育児室)が直接外気に接しないように外皮(8月後半以降には数cm、中には10cmを超えることがある)で覆われ、大きなコロニーでは、巣盤も数十段に達し、気密性が高く内部は30度以上に保たれる。ほかのハチに比べ活動期が長くなる。

◆生活史=5つのステージ
1.営巣前(越冬後の新女王蜂が営巣地を決定するまで)
2.創設女王営巣期(新女王蜂による巣作りから働き蜂が誕生するまで)
3.女王蜂・働き蜂による共同営巣期(分業が明確になり、コロニー拡大)
☆巣を直接刺激しない限り人を刺したりしない時期
4.次世代の新女王蜂・雄蜂の生育期(次の繁殖個体が生育)
★幼虫・蛹が多い時期でコロニーは緊張状態。野外で【スズメバチ】に刺される事故が多くなる。
★【オオスズメバチ】の襲撃を受ける時期でもありより緊張状態が高まる。
5.10^11月頃結婚飛行(巣には戻らない⇒コロニー解散。新女王蜂は朽木の中などで越冬)

・新女王蜂は4月頃越冬から覚める(関東地方)。2週間ほどは樹液、カイガラムシの甘露、花の蜜などで栄養補給し体力を回復する。その後巣作り。まず、3室ほどの育房を作り産卵を始める。巣作り開始から1カ月で30^40の育房がつくられ外皮で覆われる。数日で羽化すると、育児が始まるため昆虫などの狩りが加わる。次々に羽化するため多忙を極める時期。
・働き蜂が羽化し成虫になるにつれ女王蜂は産卵に専念。以降3か月間ほどは働き蜂が急激に増えてくる時期。この時期【キイロスズメバチ】【モンスズメバチ】などは、最初の巣の周りに広げるスペースがないと、引っ越す習性がある。
・働き蜂の数がピークとなるのは8月後半から9月中旬。この前には次世代の新女王蜂と雄蜂の育成か始まる。【待機蜂】と呼ぶ一見何もしていないハチが増えるのもこの時期で【待機蜂】はより攻撃的でガードマン的存在になる。

○「威嚇・警戒フェロモン」 ★Keyword=【威嚇行動】【警戒フェロモン】 P75
◆【威嚇行動】
・大あごを合わせて“カチカチ”音をたてる。
◆【警戒フェロモン】
・毒針から【警戒フェロモン】を噴霧すると、匂いがコロニー全体の仲間への警戒伝達になり、この時動くものは攻撃される。
・1匹の働き蜂の威嚇行動で噴射された、【警戒フェロモン】や毒液を引き金に多数のハチが攻撃体制になる。遮蔽空間などでは匂いによる反応がより強くなるので注意が必要。
★興奮状態の巣の周辺では十分注意する必要がある。
・興奮状態時には、巣の周辺で「動くもの」布では白よりも「黒いもの」香水や整髪料などの「刺激臭」が興奮を増幅し標的になる。
・働き蜂が100頭ほどになると、巣から5mほど離れていても、過剰防衛的に攻撃する個体も出てくるので危険。

◎「【スズメバチ】の多発している理由」P117
・餌は昆虫などのタンパク質と樹液などの炭水化物。餌の絶対量からは【スズメバチ】が大量に増えているとは思えない。
・市街地周辺では、都市化による新しい環境に適応していること、その環境下に天敵や寄生生物がいないことが増える要因と思える。
・新しく分布域を広げると、そこに新しい食物連鎖ができるまで天敵など自然の抑制が働かないため増えることが考えられる。これに対して、人間による“駆除圧”が機能していると思えるが、適度な間引きをしていることにもなり、全体の発生数は増加傾向にある。(横浜市では10年間で10倍の駆除件数)
駆除が発生を高めることにもなっている。



◆ ポイントひろい読み BEST 5 ◆

○「【スズメバチ】の仲間」P68
・世界に67種、このなかで大型である【Vespa属】は、東南アジア中心に23種が知られている。
・日本に3属16種、大型の【Vespa属】は7種が生息。【キイロスズメバチ】【コガタスズメバチ】【オオスズメバチ】【ヒメスズメバチ】【モンスズメバチ】【ツマグロスズメバチ】【チャイロスズメバチ】。
大型スズメバチ属以外にも【クロスズメバチ属】が5種、【ホオナガスズメバチ属】が4種生息。

◎「1年周期の生活ステージ」P90
・【ミツバチ】が、炭水化物を“蜂蜜”として蓄えることでコロニーを維持できるのに対し、【スズメバチ】は、幼虫の餌となる昆虫類などタンパク質を保存できない。成虫のエネルギー源である炭水化物の保存方法も獲得していない。このため、1年周期の生活ステージにならざるを得ない。(前年の巣が使われることはない)
★長雨や餌不足時に幼虫は間引され別の幼虫の餌になる。【ミツバチ】は蜜や花粉を蓄えるが【スズメバチ】は幼虫の形で蓄えているといえる。

○「毎年30人を超える死者」 ★Keyword=【アナフィラキシーショック】 P106
・【スズメバチ】などによる刺傷事故で毎年30名を超える死者が報告されている。(厚生省人口動態調査統計)
・過去に刺された経験があると【アナフィラキシーショック】と呼ばれるアレルギー症状(過剰免疫反応)を起こし大変危険である。
★ハチ毒は、各種のアミン類、低分子ペプチド、酵素類など多数の毒が“カクテル”状態に混合された毒で、神経系の擾乱を起こす。

○「【スズメバチ】の食性」 ★Keyword=【肉団子】 P142
【ヒメスズメバチ】餌のすべてが【アシナガバチ】の幼虫・繭で、餌が限られるため活動期間も6^9月中旬と短い。
【モンスズメバチ】餌の多くがセミで、春から秋まで活動期が異なるセミが安定し手に入る環境が必要。
【コガタスズメバチ】(行動半径1㎞)【キイロスズメバチ】(行動半径2㎞)昆虫・クモを主食とするが何でも食べる。魚など残飯まで餌にする。
【オオスズメバチ】大型昆虫・クモのほか秋には【ミツバチ】やほかの【スズメバチ】のコロニーを攻撃し餌を確保する。敏捷さがないため動きの鈍い昆虫が主。
食性が限られている【スズメバチ】は数が減少しているが、【キイロスズメバチ】のように餌の範囲が広く、空き缶内のジュースまで舐める種類は行動範囲を広げている。また、天敵の【オオスズメバチ】の減少も繁殖力の強い【キイロスズメバチ】が分布域を広げる要因となる。
★昆虫などを捕えると、近くの小枝で宙づり状態で脚・翅を噛み落とし【肉団子】にして持ち帰る。
☆【キイロスズメバチ】は敏捷で、クモの巣にかかったふりしてクモを誘き寄せ狩りをすると記されてる。

○「巣の発見方法に関する専門用語」P166
■【すかし】
・巣のありそうな場所を絞り、ハチの出入りを見つける。小型の【ヒメスズメバチ】などはこの方法でよく見つかる。
■【スガレ追い】(★捕捉しました)
・信州で“蜂の子”採りのため、野を越え山を越えハチを追う伝統的採集技術。白く目立つテープなど(昔は真綿を用いた)のついた肉団子を作り、これを持ち去るハチの後を追う。距離がある場合などはこの方法で2度3度繰り返し巣にたどりつく。



◆ チェックポイント BEST 3 ◆

○「スズメバチの天敵」P60 
【スズメバチネジレバネ】
樹液に来るハチを待ち伏せた幼虫が、ハチの体にしがみついてそのまま巣へ入り込む。そして、育房へ入り幼虫の体内に侵入し棲みつく。成虫になったハチの腹部内でさらに成長する。寄生されたハチは正常な働き蜂とはならずに越冬までする。これは【スズメバチネジレバネ】が生き延びるためで、寄生者により行動や生育がプログラムされてしまう。
【カギバラバチ】
葉に産み付けた卵を食べたガの幼虫の体内に侵入し、この幼虫をハチが肉団子にして巣に運び幼虫に与えることで寄生する。
【ハチクマ(猛禽類)】
【スズメバチ】【クロスズメバチ】の巣を襲い、巣盤を雛の餌とすることから【ハチクマ】と呼ばれる。
【オオスズメバチ】
【スズメバチ】にとって、壊滅的被害を受けるのが【オオスズメバチ】の襲撃で、全滅を免れない。
【人間】
最大の天敵は人間で、ミャンマー、中国などでは貴重な食料として市場で売られる。食料以外でも、漢方薬として利用される。住環境から排除されることも人間が天敵としての存在となる。

◎「【スズメバチ】への対抗策を習得している【ニホンミツバチ】」P65
【ニホンミツバチ】 ★Keyword=【蜂球(ほうきゅう)】
【スズメバチ】は【ニホンミツバチ】の巣の周辺で、蜜や花粉を収集して帰巣するハチを捕え、不要な脚や翅を切り落として肉団子にして持ち去る。ところが、【スズメバチ】が巣に降り立つと、【ニホンミツバチ】は集団で取り囲み【蜂球(ほうきゅう)】と呼ぶ団子状態になり翅と腹部を振るわせる。内部は【スズメバチ】の致死温度を超え46℃にも達する。(ニホンミツバチは50℃程度まで耐えられる)
★★★この映像は【YOU TUBE】に感動の映像を見つけました⇒http://www.youtube.com/watch?v=SnhuE5ED6NM
【セイヨウミツバチ】 ★Keyword=【asphyxia-balling(窒息スクラム)】
本来の生息地には大型の【スズメバチ】はほとんどいないので、対処法を習得していないため【スズメバチ】襲撃で全滅してしまう。
★★★(最近分かってきたことを捕捉します)
セイヨウミツバチは致死温度が低いため、【蜂球】での対抗はできないが、大群で【スズメバチ】の腹を圧迫し呼吸不能状態にして窒息死させるらしい。【asphyxia-balling(窒息スクラム)】

◎「【スズメバチ】の社会構成」 ★Keyword=【1倍体】【2倍体】
■女王蜂
・9月ごろにコロニー内で次世代女王として発生(種により一つの巣から10^1000頭)。10^11月頃結婚飛行して受精後越冬する。
・春に越冬から目覚め営巣するが、働き蜂が生まれてくるまでは1頭で巣作りから幼虫の世話までこなす。
■擬女王蜂
・何かの事故で女王蜂を失ったコロニーでは、働き蜂のなかに卵巣が発達し産卵する擬女王蜂があらわれる。
・フェロモンまで分泌し始めるが、雄と交尾していないため雄蜂しか生むことができない。
★【2倍体】の受精卵からは雌蜂、【1倍体】の未受精卵からは雄蜂が生まれる。
■働き蜂
・【2倍体】の受精卵から発生する雌蜂で、女王蜂以外は働き蜂になる。コロニーは雌蜂で構成される女系家族。
・晩秋にコロニーが崩壊し一生を終える。
■待機蜂
・働き蜂の発生がピークとなる9月ごろ、一見何もしていない蜂があらわれる。攻撃的な用心棒的存在で、外部からの攻撃に対応している。
■雄蜂
・【1倍体】の未受精卵から発生する。9月頃に次世代女王蜂とともにコロニー内で発生し、10^11月頃結婚飛行する。新女王蜂は越冬するが、雄蜂はここで生涯を終える。



▽▽▲▽▽ 害虫という概念 ▽▽▲▽▽

人に害を及ぼす昆虫、作物に被害をもたらす昆虫、大事な庭木を食い荒らす昆虫、これすべて害虫にあたる。要は、人にとって不都合な昆虫すべてを害虫として括ってしまう。

生態系を守る…生物多様性を保全する…などに賛成しながら、人にとって不都合な生物の必要性を認識するのはとても難しいことである。益虫と害虫の判断もよく考えてみるといい加減であり、人の側から勝手に、しかも目に見える部分だけで判定しているに過ぎない。

「昆虫界のライオン」とも称され、食物連鎖の頂点にいる【スズメバチ】。昆虫や芋虫のハンターであり、この部分は益虫でもある。毒針で刺すことがなければ益虫として利用されていたはず。ツバメやシジュウカラの次くらいの評価を授かっていたかもしれない。

「シカの害が増えた一因に、ニホンオオカミの絶滅がある」とよく言われることが、ニホンオオカミが生存していた時代に、そこに気が付き保護を訴えた人がいただろうか?【スズメバチ】もこれとよく似た構図であると感じる。

以前ご紹介の『昆虫未来学』(藤崎憲治著)での一文を思い出す。
『人間にとって【害虫】であっても、生態系のなかでは一役を担う【益虫】となる。【害虫駆除】を計るのではなく、害になるレベルにまで発生させない管理、共存を前提とした【害虫管理】が肝要である。目の前の【害虫】を駆除することと、その種全体を駆除、撲滅を図ることとは次元が異なる』



☆☆☆ ブログランキング参加中 ☆☆☆
良かったと感じた方・参考になった方、
是非クリックして投票ください!

ここをクリック↓


にほんブログ村 科学ブログ 自然科学へ
にほんブログ村

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

『昆虫未来学』モルフォチョウの構造色、悪食に耐えるゴキブリなど繁栄を続ける昆虫の知恵を探る。話題と蘊蓄に富む昆虫の本。お薦めです。

■昆虫未来学■12月新刊


副題に『4億年の知恵に学ぶ』とある。話題豊富で昆虫の見方が変わる!虫けらなどと呼べない知恵の数々。4億年前に誕生して以来、繁栄を続ける昆虫の知恵を探る。なかでも【バイオ・ミミクリー】(生物から学ぶ科学)の昆虫バージョンは話題が豊富でとても面白い。

人間にとって【害虫】であっても、生態系のなかでは一役を担う【益虫】となる。【害虫駆除】を計るのではなく、害になるレベルにまで発生させない管理、共存を前提とした【害虫管理】が肝要である。目の前の【害虫】を駆除することと、その種全体を駆除、撲滅を図ることとは次元が異なると強調する著者。

身近な存在でありながら、実のところ昆虫の世界は分からないことがまだまだ多い。
イモムシがどうやってチョウへ変身するのか?…
蛹の中で何が起きているのか?…
実はこれ全然解明できていない!専門家さえ解明できていない。種明かしができないマジック!

しかし、解明され始めている部分に何とも驚きの事実がある。
なかでもお薦めのタイトルは、

□ 群がる理由

□ 昆虫の性を操る細菌:ボルバキア

□ ナラ枯現象


話題が豊富で読み応え充分。お薦めの一冊です。



★詳細はこちら↓

【送料無料】昆虫未来学

【送料無料】昆虫未来学
価格:1,260円(税込、送料別)

藤崎憲治(ふじさき・けんじ)著
2010.12.20.
新潮選書



★★★☆☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★★ 編集、構成
★★★★★ 総合評価



 



◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎「【昆虫】の世界の物理作用」P47
運動エネルギーは長さの5乗に比例するため、長さが1/10になると、エネルギーは、1/100,000。高い木から落ちても平気でいるし、アメンボは表面張力で水面を滑ることができる。

○「群がる理由」P73
 【チャドクガ】【マツノハバチ】
集団のサイズを小さくすると、死んでしまう個体が増えてくる。噛む力の弱い個体は、集団の中にいることで、噛む力の強い個体が食害したところを食べ成長できる。
★どちらの昆虫も葉の堅さに対する対抗戦略と解釈することができる。
 【テントウムシダマシ(パナマ)】
赤色の甲虫が乾期に大集団をつくり休眠する。集団サイズを変えて調べると、大きな集団ほど水分の消失量が少ないことが分かる。集団が大きいほど乾燥しにくく、代謝速度も遅くなることが分かる。
 【真社会性】3つの体制
1.同種、複数の個体が協同し養育(卵・幼虫・蛹・若い成虫)
2.カースト分化し、生殖をする個体、生殖しない個体(ワーカー・兵隊)から成立
3.2世代以上の成虫個体から成立
・ハチ目【アリ】【ハチ】、シロアリ目、カメムシ目【アブラムシ】、アザミウマ目の一部でそれぞれ独自に進化。
・なかでも【ミツバチ】は高度の社会性をもち、齢に応じた分業体制を発達させた。
(羽化すると⇒ 巣の掃除⇒ 幼虫の養育⇒ 花粉・蜜の採餌など)

◎「【昆虫】の性を操る【細胞内共生細菌:ボルバキア】」 ★Keyword=【ボルバキア】 P117
★★★ 昆虫学史上の大発見:節足動物なかでも昆虫に高率で感染し、宿主の生殖を操る“菌”
 《さまざまな作用》
・精巣、卵巣に感染。感染するとオスは死に、メスは生き残る。
・感染したオスのメス化を誘導しメスにしてしまう。
・寄生バチ、アザミウマ類では、感染したメスは【単為生殖】ができるようになる。
・感染したオスと感染していないメスが交尾すると、オスの精子のボルバキア由来の毒素が作用し子孫を残せなくなる。
などなど【昆虫】の性を支配するような存在であることが知られてきた。

◎【ナラ枯現象】 ★Keyword=【カシノナガキクイムシ】 P138
・日本海側のブナ科の樹木が集団枯死にしたことに端を発し、各地で被害が出ている。明治神宮でも大きな【クヌギ】があっという間に枯れてしまった。
・2009年までに23都府県で被害の報告があり、著者の住まいのある京都各地でも拡大していると記されている。
 原因と枯死のメカニズム
1.体長5mmほどの【カシノナガキクイムシ】が樹幹にいくつも穴をあけることに始まる。
2.その時【カシナガキクイムシ】の持ち込んだ菌類が樹に感染する。
3.菌類の中には、樹を枯死させる菌も含まれるため、樹は抵抗反応を起こす。
4.この抵抗反応は過剰ともみられ、根からの水分吸収を妨げることになる。
 【カシノナガキクイムシ】は、古くからの在来昆虫で、本来弱った樹に寄生する。
大径木に集団で寄生することが確認されている。(小径木には来ないこと、集合フェロモンを分泌し集団で攻撃することが確認された)
 個体数急増と、健全樹にも寄生するようになった原因
1.地球温暖化説
・昆虫側から⇒標高の低い暖かな地域に生息していたが、温暖化で標高の高い地域、あるいは高緯度地域に進出。
・樹木側から⇒生育地が温暖化したため、適温以上の環境下で衰弱したことが被害を促進。
2.薪炭林の放棄説
・放置されてきた薪炭林が、繁殖場所として好条件になってきたとする説。
★枯死は、生態系に影響を及ぼし、ドングリを餌とするクマなどが人里に出没する一因となっている可能性も指摘される。



◆ ポイントひろい読み BEST 5 ◆

○「【昆虫】・【害虫】」
 【昆虫】P9
『昆』:「数が多い意」
『虫』:【本草学】では「人類・獣類・鳥類・魚介類以外の小動物の総称」。分類学とは違う動物群を指している。
『Insect』(昆虫):ラテン語のinsectum(切込まれた動物)に由来。
『Entomology』(昆虫学):ギリシャ語のentomon(切込まれた動物)に由来。
 【害虫】
害虫の概念は明治以降。江戸時代は台風や地震と同じ天災による被害と同等にとらえれれていた。
・目の前の【害虫】を駆除することと、その種全体を駆除、撲滅を図ることとは次元が異なると著者。
★ヒトにとって【害虫】であっても、生態系のなかでは一役を担う【益虫】となる。【害虫駆除】を計るのではなく、害になるレベルにまで発生させない管理、共存を前提とした【害虫管理】が肝要である。

○「誕生は4億年前」 ★Keyword=【共進化】 P18
・古生代デボン紀(4.1^3.6億年前)の地層から無翅の【トビムシ】【イシノミ】が出土している。このため、昆虫の起源はシルル紀(4.4^4.1億年前)とみられる。維管束植物が上陸した時期でもあり昆虫の起源と重なる。
・石炭紀(3.6^2.8億年前)後期:有翅昆虫が出現 。
・ペルム紀(2.8^2.4億年前)に著しく【適応放散】し、現存する『目』が出揃う。
・白亜紀(1.4^0.65億年前):【被子植物】が出現し繁栄に期を合わせ昆虫類が種分化した。★【共進化】
・第3紀(6500^160万年前):現存する昆虫の『科』は分化していたとみられる。

◎「【カンブリアの爆発】の原因」P22
・先カンブリア時代は、霧により遮られていたが、太陽光が強まるとともに視界が開け“目”をもつ動物が出現したことに起因する。

【送料無料】眼の誕生

【送料無料】眼の誕生
価格:2,310円(税込、送料別)

■ 『眼の誕生』
  アンドリュー・パーカー著

  2006年

 ≪この本は、感激の一冊≫
 ≪三葉虫の“眼”の進化から【カンブリア爆発】を読み解く≫



地球が明るくなった原因:太陽系が銀河の渦巻き状に伸びる4本の腕(分子ガス、塵、星が密集する部分)から離れた時期とする説がある
・地球が明るくなり ⇒動物の目が進化 ⇒生物の爆発的多様化したとする説。(捕食する側とされる側での進化的軍拡競争に起因)

◎「【石炭紀の適応放散】」 ★Keyword=【開放血管系】 P23
・石炭紀の地層から多くの昆虫目の化石が発見される。その理由として、
1)“翅”を手に入れたこと
2)大気中の酸素濃度が上昇したこと
が考えられる。“翅”で飛ぶためには多くの酸素が不可欠であり、酸素が取り込みやすい【開放血管系】の昆虫に有利にはたらいた。
★白亜紀も酸素濃度が高く、“翅”をもつ昆虫は、さらなる進出をはたす。★【翼竜】【鳥類】の祖先もこの時期に出現。
★★ 【被子植物】と“翅”をもつ【昆虫】の出現時期が重なることは重要なポイント!
★★ 『飛べること』は著しい【適応放散】を可能にしたようで、【昆虫】同様【鳥類】【コウモリ類】の多様性も秀でている。
【鳥類】9,000種、【コウモリ】約1,000種(哺乳類の1/4)の存在が裏付けている。

◎「【昆虫】の目」 ★Keyword=【ポリネーター】(花粉媒介者) P30
・【ハエ】は(300ヘルツ/秒)の感知ができる。【ヒト】は(30ヘルツ/秒)。≪蛍光灯はチラチラして見えていることになる≫
・【ポリネーター】(花粉媒介者)の色覚は、【UV-A】の紫外線を認識。植物の花は、この紫外線を利用し【ポリネーター】を誘っている。
★紫外線下で花を撮影すると、花粉と葯が蛍光発色するのは有害な紫外線から遺伝子を守るとともに、昆虫を誘引しているためと考えられる。
★≪青、紫系の花の撮影をすると、実物の色と撮込まれた写真の色に差が生じるのも、カメラの感知範囲と紫外線の存在が原因か?≫



◆ チェックポイント  ◆

◎「【昆虫】と【顕花植物】の【共進化】」P25
 【ポリネーター】(花粉媒介者)と植物の【共進化】
特に発達したのがランの仲間の【オリフィス類】で、花の形はメスのハチやアブの形をし、さらにフェロモンまで発散してオスを誘引する。
 食害に対する防衛戦略
・【被子植物】にとり【昆虫】は【ポリネーター】としての存在とともに【食害】をする加害者でもある。
・棘をもち、表皮を硬くし、柔毛・粘着毛を備え、食害の防衛を進化させた。さらに有害物質による科学的防衛システムを手に入れる。
 【ブナ】と【ブナアオシャチホコ】
・10年ほどの周期で【ブナアオシャチホコ】が大発生する。⇒【ブナ】は翌年、葉の【タンニン】をふやす。⇒
この葉を食べた幼虫は発育不良を起こし、大発生は終息する。
 さらなる軍拡防衛戦略
☆(植物)食害されると、その周辺の【フェノール】を有毒作用のある【キノン】へ変化させる。
☆(昆虫)この【キノン】を唾液中の酵素で酸化し無毒化する。
 捕食昆虫の天敵を誘引する植物
・食害を受けると揮発成分を放出。この成分が【捕食者】を誘引し、捕食昆虫を攻撃することで被害を抑える植物がある。
・トウモロコシやタバコはチョウの幼虫に傷つけられると、青臭い香りに加え天敵の【寄生バチ】を誘引する香りを放出する。
★【植物】【捕食者】【天敵】の三者が関係する軍拡防衛戦略となる。

○「【完全変態】の有利性」 ★Keyword=【完全変態】 P46
・種数の多い昆虫目の上位4種が【完全変態】であることも有利な裏付。成長のステージにより、棲息場所、食物が異なるものが多く、「生息環境悪化のリスクを分散できること」がその理由と解説している。
・【幼若ホルモン】【脱皮ホルモン】の2つのホルモンの相互作用でコントロールされる。
【脱皮ホルモン】のエクジステロイドの作用時に【幼若ホルモン】があると【幼虫】から【幼虫】へ脱皮、【幼若ホルモン】が少ないと【幼虫】から【蛹】へ、エクジステロイドだけだと【蛹】は【成虫】へ変態する。

○【農薬】 ★Keyword=【誘導多発生=リサージェンス】【モノカルチャー】 P144
《旧ソ連:キルギス・ステップでの現象》
1.手つかずの草原時には、330種の昆虫が生息。
2.開墾して麦畑にすると、142種(57%減)
しかし個体数の総数は倍増している。なかでも増えた個体の大部分は少数の種が占めていることが特徴。
★特定の種が害虫化したということであり、生態系の単純化をもたらした【モノカルチャー】を基本とする農業が【自然破壊】といえる。
■用語■
■【誘導多発生=リサージェンス】
・殺虫剤を散布すると、生態系に影響を及ぼし、かえって害虫を増やしてしまう現象。
■【生態的誘導多発生】
・天敵により抑制されていた害虫が、天敵が殺虫剤などで一掃されると、急激に増えてしまう現象。
■【生理的誘導多発生】
・有機リン剤などで作物のC/N比(炭素と窒素の比率)が変化し害虫の餌になりやすくしてしまったり、殺虫剤が害虫のホルモンに作用し生殖能力を高めてしまう現象。

◎【バイオミミクリー】P195~
・【バイオ】:生物、生命、【ミミクリー】:真似る
・【バイオミミクリー】:『生物の天分を意識的に見習う、自然からインスピレーションを得た技術革新』
【シロアリ】
・シロアリの塚の内部は、外気が0^40℃に変化しても、30℃程度に保たれる仕組みを見習う。
【モルフォチョウ】 ★Keyword=【構造色】
・0.1ミリほどの鱗粉は細い筋があり、青色の光の波長の1/2間隔で棚のような構造物が並ぶ。干渉により青色光だけが反射される。そのもの自体に色があるのではなく、光の波長以下の微細構造による発色現象。
【構造色】と呼ばれ、カード、紙幣などにも使われている。
【タマムシ】
・これも【構造色】だが、透明な20層にも及ぶ多層膜によるもので、CDの記録面が光る様子はこれと同じ。
【スズメバチ】
・親の腹部は極端にくびれるため液体しか通らない。★敵に対して毒針を自在に使えるよう腹柄(ふくへい)を細くした結果と思われる。親は餌を肉団子状にして幼虫に与えると、幼虫はこれをアミノ酸液にして親へ口渡す。親も子供を頼りに生きている。このアミノ酸混合物は、燃焼しにくい脂肪を燃やす作用があり、スポーツドリンクに応用されている。
【ヤドクガエル】
・南米に生息し、インディオが矢毒に利用した猛毒【バトラコトキシン】をもつ色鮮やかなカエル。この毒の起源は、カエルの餌である小昆虫類、アリ、ヤスデ、テントウムシなど、さらに【ササラダニ類】がそのまた起源であることが分かる。
★国内の【ササラダニ類】からも多くのアルカロイドが検出された。未知のアルカロイドも多く、今後の医療に貢献すると期待される。
★このほか、生物に学んだ技術が数多く紹介されている。なかでも身近なものに意外な生物から学んだ“技術”があり興味が尽きない。 是非ご一読ください。


◆□◆□◆ 雑 感 ◆□◆□◆

【細胞内共生細菌:ボルバキア】の記事がある。
かなり前に、「昆虫に共生する微生物」に的を絞った本を読み、驚きとともに感銘を受けたことを思い出す。

■『昆虫を操るバクテリア』石川 統著(1994.09.22.平凡社:シリーズ共生の生態学)

現在最も繁栄している生物といわれる【昆虫】。この要因の一つに、どんな有機物でも摂取し利用できることがある。この食性を支えているのが【共生微生物】で、消化管、後腸に宿主のもたない代謝経路をもち込むことで、どんな食物でも宿主が摂り込める形に分解している。【シロアリ】【ゴキブリ】が身近な代表。

もう一つ「昆虫学史上の大発見」と著者が紹介する細胞内共生細菌【ボルバキア】がある。
宿主昆虫の性を操るとなると、主体は共生細菌のようにも捉えられてしまう。
【昆虫】の性をコントロールしている事例が紹介されている。
ヒトに直接影響を及ぼすこともないので良く知られていない共生の世界。

昆虫がベクター(媒介)となる感染症の例として
・マラリア原虫(ハマダラカ)、
・アフリカ睡眠病:トリパノソーマ・ブルセイ(ツエツエバエ)、
・シャガス病:トリパノソーマ・クルジィ(オオサシガメ)
などは、ヒトに感染する原虫や鞭毛虫。直接の被害を受けることもあるのでよく知られた共生の世界。

著者は『飛べること』は著しい【適応放散】を可能にし、【昆虫】同様【鳥類】【コウモリ類】の多様性に言及している。ということは、“翅”をもつ昆虫に寄生、共生する微生物は、移動、拡散とともに【適応放散】の機会が増える。

こうなると、【昆虫】【共生微生物】どちらが主体?なのか分からなくなる。そもそも、主体などはじめからないのかもしれない。



☆☆☆ ブログランキング参加中 ☆☆☆
良かったと感じた方・参考になった方、
是非クリックして投票ください!

ここをクリック↓


にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村

テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

「昆虫の不思議」ナルホド!ヘーェ-!の記事がいくつも見つかる。ここに不思議さを感じられるほど面白い一冊となる。

■昆虫の不思議■

雑学といえば雑学、【ジャノメチョウ】の脚が4本だろうと6本だろうとどうでもいいと思えば、それもそうかもしれないが、昆虫なのになぜ?と思うとなかなか興味がわいてくる。【アリ】など6本脚の昆虫は、3本ずつ3点支持を繰り返し歩く、これをナルホド!なるほど!と受け止められると、この本楽しい本になる。
昆虫の雑学、なるほどと思う記事、ヘーェ-、ほんとに!と思わせる記事がいくつもある。

【アリジゴク】が幼虫時には肛門がなく排泄できないことなどこれもどうでもいいが、ヘーェ!と感じられるとまた面白くなる。カンパリソーダの着色に【カイガラムシ】が使われていたことも同様で、知っていれば知っているで、現在の着色料や添加物とも重ねて考えるとこれまた興味がわいてくる。
要は、このへんに面白さや不思議さを感じることができるほど面白い一冊となるのである。

『はじめに』より
「本書で紹介しているのは、各地でごく普通に見られる種類が中心。けっして特別でない普通の虫たちが、どんなに不思議か、おどろかれることだろう」
「いざ虫について知りたいと思ったときに、雑学的に興味深いことが書いてある図鑑は少ない。この本を読んで、虫をより身近に感じていただければうれしい」とある。

著者、監修者など昆虫が大好きで、その魅力に取りつかれた方々、まだまだ解っているようで分かっていない昆虫の世界。著者と一緒に、昆虫の世界を覗き見て楽しいひとときを共有してみてはいかがでしょうか。

★詳細はこちら↓
昆虫の不思議



三枝博幸(さいぐさ・ひろゆき)監修
伊沢 尚(いざわ・しょう)著
2006.07.10.発行
株式会社ナツメ社


★☆☆☆☆ 難易度
★★★★☆ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★☆☆ 保存版
★★★★☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価
 

◆《感銘・共感・知見の一文》◆

◎「昆虫の歩き方=6本の脚で三角形をつくりながら歩く」P14
6本足の昆虫、なぜ6本なのだろうか?この問いに対する一つの答えが書かれている。
右前脚と右後足それに左中足、この3本の脚が地面と接する点を結ぶと三角形になる。次に使わなかった残り3本を繰り出し、ここでも三角形をつくる。このように交互に三角形をつくりながら重心移動すれば、安定していて歩きやすい。
ナルホド今まで考えてもみなかった。イラスト付きで分かりやすい。

◎【アサギマダラの移動】P50
最近、【アサギマダラ】が2,000kmほど移動していることが分かってきた。北米の【オオカバマダラ】の移動は有名で、北米とメキシコ間の3,000kmを世代を超えて移動する。
現在【アサギマダラ】の羽にマーキング(採取者、採取場所、日時などが書かれる)して調査されている。秋に南下し台湾へわたり、春から初夏にかけ北上しているが、正確なルートはまだ分かっていない。
★【アサギネット】【アサギマダラを調べる会】などにより調査されている。

◎「カマキリの目にある【偽瞳孔】」P84
【カマキリ】の目を見ると、複眼のはずなのに黒い点が見える。見る方向を変えると黒い点が追ってくるようにも見える。これが【偽瞳孔】。黒い紙の上に束ねたストローを立て、上からのぞく。視線と平行なストローでは黒い下地が見える。これが黒い点が見える理由で、【偽瞳孔】という。【バッタ】【チョウ】でも見られる。
★もう一つ、夜には複眼の表面にそれぞれ色素が集まり、黒っぽくなる。かすかな光も吸収できるようにしているため。

◎「コンクリートを食べる【ダンゴムシ】【カタツムリ】」P102
土のないブロックやコンクリートの周辺で見つかる。【ダンゴムシ】の殻はカルシウムでできている。カルシウムを摂り入れるためコンクリートを食べる。脱皮後の殻も食べカルシウムのリサイクルをする。
☆この【ダンゴムシ】昆虫ではないが、虫と付くので記載されている様子。

◎「【ジャノメチョウ】【タテハチョウ】の退化した前脚」P155
【ジャノメチョウ】6本脚の前脚が退化して、4本脚に見える昆虫
【タテハチョウ】の前脚も退化し短くなっているため、4本脚に見える。

◆《ポイントひろい読み BEST 5》◆

○「ホタルの光点滅の違い」P40
【ゲンジボタル】の点滅は、東日本では1回/4秒、西日本で1回/2秒。
★中間の長野県付近では1回/3秒。

【ヘイケボタル】の点滅は、かなりせわしなく、1回/秒。
【ゲンジボタル】のオスは、葉の上にいるメスの光を見つけ、20センチほどの距離から点滅信号を送る。
これに対してメスが1回光れば交渉成立となる。
★日本に50種ほどいるホタルのうち、幼虫が水の中で生育するのは【クメジマホタル】を加えて3種類。

○「【アリジゴク】は肛門がなく糞をしない」P100
【ウスバカゲロウ】の幼虫で、【アリ】などの体液を吸って成長する。成長により2^3年で成虫になるが、その間一度も排出ができない。
成虫になって最初にたまった糞を排出する。

○「【ナミテントウ】の模様」P126
さまざまな模様のテントウムシの写真が載っている。しかもすべて同種であることが【ナミテントウ】の特徴という。すごい個体差?多様性?
英語でLady Beetle(貴婦人の甲虫)、かわいさから女性にも人気の昆虫。
突くと、脚の付け根から黄色の苦い汁を出す。これで鳥からの捕食を逃れる

○「【ゲンゴロウ】と【ガムシ】水中では空気の蓄え方が違う」P144
【ゲンゴロウ】逆さになり水面からお尻を出して呼吸、吸い込んだ空気を翅の下に蓄える。肉食。
【ガムシ】胸に牙のような突起があるため牙虫(ガムシ)?らしい。【ゲンゴロウ】によく似ているが、成虫は草食。腹に細かい毛がありここに空気をためるため、水中で反射して銀色に光るのですぐわかる。

○「儚い命の【クリオオアブラムシ】長寿の【ヤマトシロアリ】の女王」P192 P207
【クリオオアブラムシ】:生まれて6日で成虫、4^5日子を生み続ける11日間の一生
【ヤマトシロアリ】の女王:小さな王と暮らし、寿命は100年にもなるらしい。体長15mm、命の限り産卵し続け、総数は50億個にもなるという。

◆《チェックポイント BEST 5》◆
ここは少し上級者編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

○「翅の形ができるまで」 ★キーワード=【アポトーシス】 P21
チョウの羽の尾状突起、これが形作られるのは、はじめにあるなめらかな翅の細胞が【アポトーシス】により少しづつ死んで形をつくる。種により【アポトーシス】での細胞消滅の形が異なり違いが生じる。
★1997年、国立がんセンターは、モンシロチョウの蛹から、【アポトーシス】を起こす物質【ピエリシン】の分離に成功。ガン細胞を死滅させることに応用できるのではと期待される。モンシロチョウの学名【ピエリス属】から命名された。

◎「昆虫の持つ【目玉模様】」P56
【目玉模様】をもつ昆虫は、危険が近づくとその模様を見せつける。
しかも、その模様も自分を捉えようとする捕食者の天敵である【カマキリ】【フクロウ】【ヘビ】などに似せている。敵の天敵など知る由もないと思うのだが不思議である。
【トラフシジミ】の後翅の先は、触角と目のような形に飛び出している。これも襲われても致命傷にならないための防御の役目を果たすらしい。

○【蜂蜜の成分】P62
花の蜜の成分は砂糖と同じ。蜂蜜の成分は、【ミツバチ】の唾液で酵素分解され【ブドウ糖】【果糖】である。乳児、病人でも吸収されやすいのはこのためで、糖分の比率も花の蜜で20%、蜂蜜で80%。水分が少ないため保存が効く。
★【蜜胃】:【ミツバチ】の腸の手前にあり、ここに蜜を集めて移動する。弁がありエネルギーとして自分が使うことはない。

◎「【ロウムシ】と色素」 ★キーワード=【食用色素】 P97
植物に口管を差し込み樹液を吸う【カメムシ】の仲間で、つぶすと赤い体液が出てくる。【ロウムシ】の仲間の体液を【コチニール】といい【カンパリソーダ】などの【食用色素】、口紅の色素として利用される。
 《これ調べて見ると》
カイガラムシの仲間の【エンジムシ(Coccus cacti)】は【コチニールカイガラムシ】とも呼ばれ、【食用色素】として利用されていたが、2007年以降は人工着色量【赤色2号=アマランス】【青色1号=ブリリアントブルーFCF】【黄色5号=サンセットイエローFCF】(いずれもタール系色素)に代替されているらしい。エンジムシの種小名は、サボテン(CACTUS)につくカイガラムシに由来する。
 《もっと調べると》
メキシコ産の【ウチワサボテン】につく【カイガラムシ】で、ハムや明太子の着色にも使われているようです。エンジ色の“エンジ”は、【エンジムシ】の名が由来とは驚き。

◎「【カ】の針と注射針」P99
【カ】に刺されても痛くないことをヒントにした注射針をテルモが開発。0.2ミリ、インスリン用注射針で実用化、2005年度【グッドデザイン大賞】を受賞した。
唾液には、凝固反応を阻害する物質や痛みを麻痺させる物質をもつ。痛みを麻痺させる【たんぱく質】はアレルギー反応を起こしてかゆみを生じる。
★【抗血液凝固物質】は吸血性の【ヒル】から発見され【ヒルジン】として医薬品として開発された。




☆☆☆ ブログランキング参加中 ☆☆☆
良かったと感じた方・参考になった方、
是非クリックして投票ください!

ここをクリック↓





にほんブログ村 科学ブログ 自然科学へ
にほんブログ村

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

カテゴリ

☆★ 目次です! ★☆
こちらから ご覧ください ↓


プロフィール

Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

植物の本、昆虫、小動物、菌類からウィルスまでいろいろ登場予定。
科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
最近話題の本も登場、その他 私の勝手にいろいろ出てきそうです。
気軽に楽しんでいただけると幸いです。

検索フォーム
最新記事
リンク
Dr.kusaichi お薦めGOODS




★お薦めフィールドグッズ★

◆双眼鏡
バードウォッチングから樹の花など自然観察に最適。星空観察にも向いています。 明るく自然な視界、本格防水、メガネを掛けたままでも使いやすいお勧め品。

◆送料無料◆【新品】 ニコン 8倍双眼鏡 モナークIII 8×42D CF





◆双眼鏡
バードウォッチングから樹の花など自然観察に最適。防水タイプ。 ポケットに入る小型軽量タイプ。

★15時迄の代引注文は即日発送★ビクセン 双眼鏡 ニューアペックス HR 10×28 完全防水 (ケース...





◆ネイチャースコープ
気軽に携帯して、マイクロウォッチング、ニコンのカメラでそのまま撮影も可能。 野外観察が可能の優れもの、子供でも使える軽量、防水タイプ。

【ネイチャースコープ『ファーブル』ミニタイプ】
[メーカー取寄せ]ニコン ファーブルミニ 顕微鏡 ネイチャースコープ [Nikon NATURESCOPE FABREM...





◆フィールドスコープ
フィールドスコープの標準タイプ。軽量、防水タイプ。 グループ観察会などで、便利な1台。

Nikon ニコン III-A /フィールドスコープ 






◆ポケットルーペ
小型、軽量、高解像度。 レンズ有効径が大きく見やすい優れもの。

ニコン ニューポケットタイプルーペ 20D バーガンディ [Nikon 2・3・5x loupe 2・3・5倍 携帯 ...


 
 
 
◆コンパクトカメラ
小型、軽量、高解像度。 植物、小動物などズームマクロで雄しべ雌しべもきれいに撮れる使いやすいカメラ
 
光学10.7倍ズームを搭載、約5コマ/秒の高速連写を実現リコー CX2 シルバー 写真 




  


◆トレッキング用ストック
軽量、撮影時に一脚としてブレ防止にも使えます

 


キザキ カメラ一脚対応トレッキングポール KTE-1005C 【トレッキング用ストック】【smtb-TK】


 


ハイキング用ストック(アルミ製)【在庫切れ】LEKI レキ ULマイクロアンチSLS 1300136 550グリ...


◆【トレッキングシューズ】
軽量、通気性能、履心地


【送料無料】【20%OFF】ゴアテックスCaravan 00104 キャラバン トレッキングシューズ C-4 ブラウン 


★お薦めフィールド図鑑★


◆【声が聞こえる『野鳥図鑑』】
各ページにドットコードがあり、サウンドリーダーで再生。生きいきした鳥の声を聞けます。 地鳴、さえずりも別に再生できる優れもの。



声が聞こえる!野鳥図鑑増補改訂版





◆【声が聞こえる『カエル』】
『野鳥図鑑』に続く『カエル』良くこれだけの収録ができたと驚く内容です。 野鳥と同じサウンドリーダーで再生可能の優れもの。



声が聞こえる!カエルハンドブック





◆【日本帰化植物写真図鑑】
雑草と呼ばれる草本類の“外来種600種”が掲載され野外観察に心強い1冊。



日本帰化植物写真図鑑改訂





★樹木図鑑(携帯用ポケットガイド)

◆【庭木・街の木】ポケットガイド④
身近な庭木275種、413品種を収録。 フィールドで使いやすい。



庭木・街の木





◆【野山の樹木】ポケットガイド⑨
日本に自生する樹木372種400品種を収録。 庭木・街の木の姉妹版。



野山の樹木





★野草図鑑(携帯用ポケットガイド)

◆【街・里の野草】ポケットガイド②
四季の普通にみられる野草295種を紹介。 写真と解説がコンパクトで分かりやすい。



街・里の野草





◆【野山の野草】ポケットガイド⑩
野、山、水辺のよく見かける野草391種を紹介。 街・里の野草の姉妹版。



野山の野草





★昆虫図鑑

◆【野や庭の昆虫】
植物との関係から昆虫を表示している点が特徴。 庭、野山、作物、畑などに分けられ検索しやすい。



野や庭の昆虫





◆【昆虫の集まる花ハンドブック】
昆虫により花粉が運ばれる虫媒花を中心に142種の受粉方法、仕組みを解説。 気軽に観察と推理が楽しめる。



昆虫の集まる花ハンドブック





★こんな図鑑もありますョ!

◆【イモムシハンドブック】
チョウ類91種、ガ類135種、の合わせて226種を掲載。 幼虫、さなぎ、成虫の写真、ここまでの資料に感激。



イモムシハンドブック





◆【冬虫夏草ハンドブック】
漢方薬でよく知られる冬虫夏草。 基本から見分けまで見ているだけでも楽しい図鑑。



冬虫夏草ハンドブック




◆【ベリーハンドブック】
ツツジ科とバラ科の“ベリー”と呼ばれる実を付ける植物の図鑑。 女性に人気のベリー、こんなにたくさんあった!



ベリーハンドブック




★お薦めフィールド図鑑
                          (季節編)★


◆【日本の桜】
サクラ、栽培品種から、モモ、リンゴまでわかりやすく分類。 写真が鮮明で桜の季節に、必携の図鑑。



日本の桜増補改訂版




◆【日本のスミレ】 
山渓ハンディ図鑑⑥
可憐で人気のスミレ。しかし地域種あり、交雑種あり外来種もある。 検索表でまず見当を付けることから見分けるスミレ専門の図鑑。



日本のスミレ増補改訂




◆【日本の野菊】 
山渓ハンディ図鑑⑪
『検索チャート』『見分け方コラム』で野菊を見分ける手法を詳しく解説。 どこで見分けるかのポイントがつかめる。



日本の野菊




★じっくり調べる図鑑★
各部の詳細写真が多く分かりやすい。

◆【樹に咲く花】離弁花①

樹に咲く花(離弁花 1)改訂第3版


◆【樹に咲く花】離弁花②

樹に咲く花(離弁花 2)2版


◆【樹に咲く花】合弁花他③

樹に咲く花(合弁花・単子葉・裸子植物)改訂第3版


◆【野に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑①


野に咲く花


◆【山に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑②


山に咲く花4版


◆【高山に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑⑧


高山に咲く花


最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
管理画面へ
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。