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『動的平衡2』エッセイでも読む心地の生命科学談。バッハやフェルメールの作品に“動的な美”を見つけ生命のありようになぞらえる。白眉の一冊。

■動的平衡 2■


本書の一番の読みどころは、なんと“まえがき”。
ダビンチ、伊藤若冲、熊田千佳慕、エッシャー、勅使河原三郎、そしてフェルメールまで登場する。共通するのは、時間の流れであり、連綿と続く変化。動的な世界の一瞬をとらえた作品は、どれも“動的な美”が宿る。『世界は不変ではなく不断の動きの中にある。それは生命に似ている』《まえがきにかえて》より

読み終えて再び“まえがき”を読み返す。やはり白眉の20ページ!生物学者の眼を通して解説されると、見覚えのある作品に新たな発見がある。視点が違うというよりは、もともとその作品に内在していた“動的な美”を見つけることができたと表現した方が適切に感じる。

続く本論に、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」が登場する。こんどは、遺伝子の振る舞いをバッハの音符になぞらえる。グレン・グールドのデビューCDは、当時センセーショナルな演奏で話題になった。そして最晩年に同じ曲を再録している。テンポが全く違う2つの録音。しかし、どちらもグールドの演奏でありバッハの作品。
 ←クリックするとグールドのピアノ演奏始まります!

著者の視点と感性を通して芸術の世界、生命の世界に接する楽しさがある。
そこに共通するのは“動的な美”
文章表現も会話的で読みやすい。それに、なんと言っても文章が上手い。
エッセイでも読む感じ。お薦めです。



★詳細はこちら↓

『動的平衡2』
福岡伸一(ふくおか・しんいち)著
2011.12.07. 第一刷
株式会社 木楽舎



★★★☆☆ 難易度
★★★★☆ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★★ 編集、構成
★★★★★ 総合評価





◆ 感銘・共感・知見の一文 ◆

◎「『生物と無生物の間』で考えたこと」 ★Keyword=【動的平衡】 P41
「生命現象を特徴づけるものは自己複製だけでなく、むしろ合成と分解を繰り返しつつ一定の恒常性を維持するあり方【動的平衡】にあるのではないか」
「生命現象や進化は、ダーウィニズムの【適者生存】論だけでは説明できない原理によっても制御されているのではないか」と考える著者が導き出したのが【動的平衡】。
◆ 関連blog記事 ⇒ ◆『生物と無生物のあいだ』

◎「【ゲノム】はプログラムではない?」P49
バッハの譜面には、速度や強弱の指示がない。演奏楽器の指示さえない作品がある。自由さに満ち、即興性に富んでいる。多くの部分が奏者に委ねられる。
・これを【ゲノム】に重ねて解説している。
「遺伝子の集合体である【ゲノム】は、プログラムでも指示書でもない」
「遺伝子は、発現の強さ、関連性を、環境との相互作用にのみ委ねる」
・遺伝子は楽譜であり、置かれた環境により、スイッチをON/OFFし、強弱を調節している。体のどこかにスイッチがあり、それぞれ独自の適応をしているという仮説が考えられた。
★さまざまに改良された『犬』。しかし、遺伝子的にはほとんど同じで、発現の違いを説明でしきれない。この違いは遺伝子のON/OFFのタイミングと強弱ではないか?

◎【エピジェネティックス:epigenetics】 ★Keyword=【エピジェネティックス】 P206
・一般的な遺伝【ジュネティックス】の外側で生じる遺伝現象で【遺伝子】が活性するタイミングを制御する。これにより発現に差が生じる。『epi』は「追加」「付帯」「後」という意味の前置詞。
☆【遺伝子】は楽譜であり、そこに書かれた音符の奏で方で曲想も違ってくる。『ゴールドベルク変奏曲』のように!
・「ヒト」と「チンパンジー」の【ゲノム】の違いは僅か2%。ここに「ヒト」となりうる【遺伝子】があるのかといえばそうではなく、違いのある2%の【遺伝子】を入れ換えても「ヒト」にはなりえない。
・著者は、【遺伝子】のスイッチON/OFFのタイミングの差と推測する。【遺伝子】は情報であり、実際に作用をするのはタンパク質。このタンパク質が作用をもたらすタイミングの差ということになる。
 成熟タイミングの遅れとしては【ネオテニー】がある。子供の特徴を残したまま成熟することで、行動や学習の期間が長くなり、有利な方向へ進化することができるとする仮説。



◆ ポイントひろい読み BEST 3 ◆

◎「【万能細胞】を有している植物細胞」 ★Keyword=【万能細胞】【ES細胞】【iPS細胞】 P63
・【万能細胞】の表現は適切ではない。【ES細胞】【iPS細胞】は多分化能をもつ幹細胞ではあるが、体そのものはつくれない。個体をつくれるのは【受精卵】だけである。
・これに対し、植物細胞はどの細胞も【万能細胞】。これを応用したのが、挿し木であり、接ぎ木である。
★植物の細胞が万能性を有しているのは、動くことができない代わりに、いつでも体の一部からコピーを再生できる能力を保持した進化の帰納と著者の指摘がある。

◎「【生物多様性】が支える【動的平衡】」P78
・地球上で、物質やエネルギーは絶え間なく結びつきを変え循環している。この担い手は生物であり、あらゆる場所で、あらゆる方法で絶え間なく活動していることが地球環境を持続可能なものにしている。
・生物はこのネットワークの結節点に位置しているため、この結節点が多いほど、多岐にわたるほど強靭であるとともに柔軟で可変的であり、復元力を備えている。
★地球環境の【動的平衡】を保持し、維持するために【生物多様性】が必要であり、【動的平衡】の強靭さと回復力の大きさが支えとなる。

◎「素晴らしい言葉【センス・オブ・ワンダー】」P70
・日本にR.カーソンを紹介した上遠恵子さんの翻訳が素晴らしい。
『The Sense of Wonder』 ⇔ 『神秘さや不思議さに目をみはる感性』
・生命と私たちの関係を知る原点であり【生物多様性】の重要さを考える基盤となる。
・『私たちの多くは大人になる前に澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬するべきものへの直感力を鈍らせ、あるいはまったく失ってしまいます。~世界中の子供に、生涯消えることのない“センス・オブ・ワンダー”を授けてほしい』R.カーソン
■上遠恵子 (かみとお・けいこ)
東京都出身のエッセイスト/翻訳家/レイチェル・カーソン日本協会理事長



◆ チェックポイント BEST 3 ◆

◎「200兆の腸内細菌」 ★Keyword=【細菌叢:コロニー】 P127
・ヒトの細胞が60兆個あるといわれるに対し、腸内細菌は推定100~200兆個もある。
・体細胞の直径が30μmに対し、大腸菌は長さ:数μm、太さ:1μmとかなり小さい。
・腸内細菌は、大腸菌、乳酸菌などが主で、消化管内に【細菌叢:コロニー】を形成し、消化を助けるとともに、外部からの細菌の侵入を防ぐ働きがある。住んでいる風土により腸内細菌の種類も異なり、日本人は海藻を分解することができる腸内細菌が共生しているという。
★海外旅行などで、おなかの調子が悪くなるのは、当地の食材と腸内細菌の相性が合わないことも一因。

◎「大腸菌のDNAとヒトのDNA」 P143
大腸菌:4.6×1,000,000 ⇒4.6Mbp(メガベースペア、460万塩基対)
ヒト :3.0×1,000,000,000 ⇒3Gbp(ギガベースペア、30億塩基対)
★本書に「大腸菌をハードディクにたとえ460MB」とあるが、4.6MBで2桁違うのではないだろうか?そうなると「大腸菌の6倍程度の情報量でヒトができることになる」の部分は、600倍になる?

◎「【プラスミド】の【水平伝播】」 ★Keyword=【プラスミド】【水平伝播】
・大腸菌は細胞の大きさから【ゲノム】は1つしかないが【プラスミド】という核外遺伝子をもつ。3,000塩基対ほどの情報量で、1細胞に10個程収めることができる。
・【ゲノム】が親から子への垂直伝播するのに対し【プラスミド】は細胞分裂とは関わりなく、別の菌へ【水平伝播】することができることが特徴。
耐性遺伝子情報などは【プラスミド】により瞬く間に広がる。
■【プラスミド:plasmid 】 ☆正式名称はプラスミドDNA
細菌や酵母の細胞質内に存在する核以外の細胞質中のDNA分子の総称。自律増殖し、娘細胞へ伝えられる核外遺伝子。遺伝子工学では、プラスミドに特定遺伝子を組み込みベクターとして利用する。
■【ベクター:vector(運び屋)】
DNA断片を大腸菌内に運ぶプラスミドのこと。遺伝子組換え技術に用いられる。



GoldbergVariations 「ゴールドベルク変奏曲」 GoldbergVariations

私も一時、グールドのバッハに心酔していた。グールドの弾くバッハのCDは逃さず聴いた。「ゴールドベルク変奏曲」もいいが、なんといっても「6つのパルティータ」が気に入っている。

そのCDのなかに、驚かされた1枚がある。グールドのCDには、本人のうなり声や鼻歌が紛れ込んで録音されたものがいくつかある。3声の曲を聴いていたとき、どこからともなく鼻歌が聞こえてくる。2声に比べ、3声の演奏は真ん中の声部を右手と左手に分けて演奏することが加わるため格段にややこしく難しくなる。

このややこしい3声の曲の途中でも鼻歌を歌っている。気になったので、耳を凝らして聞いてみると3声のどれとも異なる別のフレーズ。ナント即興で、もう一つ声部を追加して口ずさんでいた。4声?…ウッー…エッー…驚き!…ヒェー…タマゲタ!…いまだに忘れられない。頭のなかはどうなっているのだろうか?タダタダ呆然としてしまった…衝撃的発見だった。

1. 3. 聴き比べ

■「ゴールドベルク変奏曲」お薦め版
1. グレン・グールド 1955 演奏録音
2. グレン・グールド 1981 演奏録音
3. シトコヴェツキー編曲・演奏の弦楽三重奏版
ジャズ編曲
4. ジョン・ ルイスが即興でアレンジ
5. ジャック・ ルーシェトリオ



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『生物図録』“視覚でとらえるフォトサイエンス”書棚において重宝、写真とイラストにより視覚で理解できるお薦めの生物百科。

■生物図録■


“視覚でとらえるフォトサイエンス”
日常手の届く書棚において重宝する生物の事典的存在、うろ覚えの知識を確認できる。

写真とイラストにより視角で理解できるお薦めの生物百科。内容もかなり専門的で充実している。

2000年に初版以来、改訂版の20刷、高校の生物を対象にした教育図書であるが、一般社会人が参考にする資料として“ウッテツケ”!
教育図書のため価格も抑えられなんと¥880。充実した内容、写真・イラストも的確であり、手元に置いて役立つ“スグレモノ”!これを利用しない手はない。

科学離れなどといわれるが、眺めるだけでもナルホドの解説が多く楽しめる。
新聞・ニュースなど一般社会でのキーワードが手軽に確認でき理解しやすい。

◆人体
【ES細胞】【iPS細胞】【遺伝子治療】【ゲノム創薬】【アレルギー】

◆植物に絞って眺めてみると
【植物組織・構造】【植物ホルモン】【C4植物】【CAM植物】

◆環境
【外来生物法】【生態系の構造】【炭素循環】

◆生態系
【植物群落】【植物群系】【生物多様性】

など、なかには自分が社会人となって以降のキーワードも多い。
書棚に一冊お薦めです。



★詳細はこちら↓

『生物図録』
鈴木孝仁(すずき・たかひと)監修
2011.04.10.第20刷
数研出版株式会社


★★★☆☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★★ 保存版
★★★★★ 編集、構成
★★★★★ 総合評価

 



◆ ポイントひろい読み BEST 3 ◆

○「細胞を構成する物質」P20 
・【地殻】を構成する元素
・【ヒト】の体を構成する元素(生重量)
・【ヒト】の体を構成する元素(乾燥重量)
の比較表がある。いわゆる【クラーク数】と生体との元素構成の比較。興味あるデータがグラフ化されているので分かりやすい。

○「細胞を構成する【有機物】の構造」P21
【炭水化物】【脂質】【タンパク質】の【構造式】が一覧になっていてこれまた分かりやすい。
・単糖類の【グルコース】【フルクトース】【ガラクトース】【リボースC5 H10 O5】【デオキシリボースC5 H10 O4】、
・二糖類の【マルトース(麦芽糖)】【スクロース(ショ糖)】【ラクトース(乳糖)】
・多糖類の【デンプン】【グリコーゲン】【セルロース】など一覧表となり分かりやすい。

○「植物の組織」P40
・茎頂・葉・茎・根の構造が細密なイラストで描かれている。
・単子葉と双子葉の【維管束】の配列は、イラストと断面写真が並びよくわかる。
・道管・仮道管・師管の断面もよくわかる。

◎「生態系の収支」P226
・生産者と消費者の物質収支
・炭素循環・窒素循環・エネルギーの流れ
・食物連鎖・生物濃縮
・地球温暖化・オゾン層破壊

◆ チェックポイント ◆

◎「特集として新しく増えた解説」
◆【ES細胞】と臓器幹細胞
◆ゲノム創薬
◆脳と心のかかわり
◆私たちの生活とアレルギー
◆外来生物の影響
◆大きく変貌する日本の自然



◆関連図書
◇化学図録         ◇物理図録

 



◆□◆□◆ 風評について雑感 ◆□◆□◆

東北関東大地震に関して、いくつも【チェーンメール】が飛び交っている。
一つは、「コスモ石油のコンビナート火災」に関するもので、“有害物質”が飛散、特に雨に付着して人体に害を及ぼすというもの。実は私のメールにも着信し、何が有害なのか?…腑に落ちなかった。LPガスのタンクの火災で、発生するのは、CO2とH2O、硫黄を含有していれば硫化酸化物と、煤ぐらいに思う。
早速web検索してみると、「コスモ石油の広報」「千葉県庁石油コンビナート等防災本部」の記事が目に入る。当事者と第三者の見解であるが、どちらも有害物質は発生しないとある。

いかにもモットモらしく書かれたメール。文末に「みんなに転送してあげて下さい」とある。あまり考えもせず親切心で転送してしまうと【チェーンメール】の片棒を担ぐことになる。最初に作成した発信者の思う壺である。

もう一つ、「放射線対策として、イソジンを飲むといい」というメールで、【ヨウ素】を含有しているところが騙されるポイント。被害を受けやすい子供に【ヨウ化カリウム】を処方することで、甲状腺に【放射性ヨウ素】が摂り込まれにくくなる。
チェルノブイリ事故などで聞きかじり、身の回りにあるヨウ素 ⇒ イソジンとなったらしいが、あまりの短絡思考に驚く。
放射線⇒被爆⇒甲状腺⇒ヨウ素⇒…ここまではいいが、次にイソジンがくるからお笑いである!発信者は、ジョークのつもりで書いたのかもしれない。ただし、受信者もここを心得ていればの話である。飲み薬として製造さたものではなく【ヨウ素】以外に炎症、消毒作用のある成分も含有する。そして【ヨウ素】自体致死量2^3gの有毒物質である。

こんな時、チョット確認する事典としてこの図録“ウッテツケ”である。
このシリーズ他にも【生物】【化学】【物理】がありどれもお薦め!
そして、もう一冊は、以前にお薦めの『元素111の新知識』(ブルーバックス)。
ヨウ素以外に【原発事故】で発生する放射性元素や半減期についても確認しておきたい。

【チェーンメール】や風評に対しては、真偽を確認することが大切で、これをしないで転送すれば思わぬ風評とデマを広める共犯になる。くれぐれもご注意!ください。



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『生命を捉えなおす』生命は分析しても分からない。生命とは何か?時を超えて語りかける永遠のテーマ。

■生命を捉えなおす■


1978年の初版に書かれた【一部】と、増補版の初版時に書かれた【二部】から構成。30余年の時を超え語りかける名著。
生命システムには、要素の分析では理解できない面がある。『生きている状態』を新しい価値基盤として、人間と人間社会を捉えなおすことが必要で、人間と環境との調和の問題としても喚起されている」

「生命は、個体に対して考えられていたものだったが、多数の細胞にも、さらに生態系、人間社会や文明にまで固有の生命を考えることが必要になってきた」 「本書の目的は『生命とは何か』を普遍的な見方で捉えることであり、生命に関する私の見方や捉え方を書くことである」 (はしがき)より

DNA、分子遺伝学など、生物学ではミクロの世界が目立つなかで、研究も要素に合わせるように細分化してきた。こんな時期に本書を読むと、大事な視点が見落されているのではないかと考えさせられる。『生命とは何か』永遠のテーマが浮んでくる。

グラフとともに数式がいろいろ登場するが、ここで引いてしまっては本書の主題が見えてこない。こんな時は「数式があるな」くらいで流し読み、本書の主題を見失わないようにして、大局的な捉え方をしたほうが文脈が見えてくる。「ガウス分布」「ボルツマンの分布則」などいきなり出てきて面食らうばかり、このあたりで嫌気がさしたり挫折しては、折角の名著を読み損なう。

新しく書かれた【二部】は、いささか観念的。【一部】の『生命とは何か』に対する思考で感じた新鮮さ柔軟さがない。【カオス】【フラクタル】など、【一部】が書かれた後に発展した分野まで話を広げたため、それこそ混沌とした【カオス】の感がある。
【一部】に書かれた生物、生命に対する捉え方、考え方を焦点に読む方が、ポイントが明確で感銘を受けると思うのだが、如何?



★詳細はこちら↓


清水博(しみず・ひろし)著
1978.05.25.初版
1990.10.25.増補版初版
中公新書 503

★★★★☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★★☆ 保存版
★★★★☆ 編集、構成
★★★★★ 総合評価

 

◆《感銘・共感・知見の一文》◆

◎「分析しても自然科学的原理はわからない」P29
分析は、近代科学の最も強力な認識手段、要素に分解し原因と結果の関係を見出すと分かった気になる。ところが、『生きていること』の自然科学的原理は、分析をすすめても浮かび上がってはこない。
例として、「気体」「液体」「固体」の3つの状態にある水を分析し、要素である分子を探し当てた時、これら3態の水分子は全く同等である。物質の状態の差は、分子まで分析すると失われてしまう。
反面、酸素、鉄などのように、構成要素が異なっていても、気体、液体、固体の3態があるという物質全体に共通した性質があることも確か。これは分析的な見方ではまったくわからない。

◎「グローバルな性質の特徴は、構成要素の個性に関係しない」 ★Keyword=【非線形性】 P31
理由1)
対象の要素が、あまりに多くの原子や分子から成り立っているため、グローバルな性質が出現する。気体1㎝3は、1気圧下で10×10の20乗個の分子からなる。その分子1個を取り出してもグローバルな性質を論じることはできない。
理由2)
集まった分子の性質は、ひとつひとつの分子の性質の足し算で決まらない。分子のまとまり方や集まり方で、性質に影響してくる。
★個々の要素の性質を単純に足しても全体の性質が出てこないことを【非線形性】と呼ぶ。
・a+bの原因で、A+Bの結果になるのが【線形性】
・A+B+X のように、新たな X が加わったり、まったく違う結果になるのが【非線形性】
相乗効果はこの【非線形性】の効果で、要素の数が多い物質のグローバルな性質は【非線形性】が目立ってくる。

◎「グローバルな状態に共通する性質【相転移】」 ★Keyword=【相転移】 P36
物質や系の状態が、別の相に変わることを【相転移】と呼び、不連続に突然起こる。水が、氷に、あるいは蒸気になる。温度以外にも、濃度など物理的環境の変化でも起こすことができる。
“生”と“死”も不連続で、それぞれ一つの【相】として捉えると、つじつまが合う。
★不連続に起る理由は、各要素間に相互作用で、“ふるまい”が一緒になる傾向があるためで、言い換えれば各要素間の運動の【非線形性】。

○「【ゆらぎ】と生物進化」P232
分子レベルの【進化】については、【中立説】(木村資生)などの理論も実験的な検証が可能になってきた。DNAの構造は、シュレディンガーの考えていた固定されたものではなく、たえずランダムに揺れている。この【ゆらぎ】があるために、種の集団の中にさまざまなDNAをもつ個体が出現する。子孫に伝えられる遺伝子は一定の配列のなかを“ゆらいで”いることがわかる。
【自然淘汰】は、この【ゆらぎ】のなかから環境に適応したものを選択するため、適応できる遺伝子をもつ生物が生き残る。
★社会や国家についても同様なことが言える。独裁国や高度の管理社会は【ゆらぎ】(自由)がないため、ある時期に簡単に崩壊してしまう。



◆《ポイントひろい読み BEST 5》◆

◎「生きている状態と死んでいる状態の違い」P33
この2つの状態は大変に異なるが、その差を分子に還元することはできない。はっきり区別できる状態は、生体という分子の集まりがもつグローバルな性質であると推定される。
★分子生物学では、生物を分解し分子の活性原因となる機構を調べるが、生きている状態そのものではない。生きている状態でも同じ“ふるまい”であるという期待、前提で調べていることになる。

◎「生体の形態に見られる【動的秩序】」P98
結晶構造がもつ原子や分子:できる限り動かないとき安定⇒【静的秩序】
生体を構成する原子や分子:運動、反応、入れ替わりなどができるときだけ(生体が“生きている”ときだけ)安定⇒ 【動的秩序】

○「ウサギとカメの競争に見る【エネルギー変換効率】」P140
ウサギとカメの筋肉を比べると、速く縮めることができるのは…【ウサギ】。エネルギー変換効率は…【カメ】が優れる。
【ウサギ】:速く走れるが、エネルギー変換効率が悪いため疲れやすい
【カメ】:ゆっくりしか進めないが、エネルギー変換効率は良いため疲れにくく、いつまでも進み続けることができる

◎【動的協力性】P247
多くの要素が集まり一つの系をつくると、個々の要素に存在しなかった新しいグローバルな性質が出現してくる。生命が【動的秩序】を自己形成する能力と考えると、生体だけでなく、さまざまな系に固有の生命と生命現象を考えることができる。個々の要素の運動、状態変化が、系にマクロな秩序をつくり【動的協力性】をもつようになる。
『生きている系にはみな【動的協力性】がはたらき秩序を形成している』というのが本書の主張であると著者。

◎「自然に存在するさまざまな系」P248
自然に存在するさまざまな生きている系があるため、自然の階層構造とダイナミックスがある。環境問題は、人間社会も自然環境とともに、大きな生きた系を構成している一つの要素にすぎない。この大きな系の秩序の消滅は、系全体が死にいたることを意味している。



◆《チェックポイント》◆
ここは少し上級編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

○「フィードバック・フィードフォワード」 ★Keyword=【フィードフォワード】 P276
【フィードフォワード】:期待への制御。全体の状態が混沌とし見通せない場合、将来を知るための予知能力が必要になる。断片的につかむだけでは不十分で、将来にいたる変化の法則を捉えなければ、現在と将来の関係を知ることはできない。混沌とした情報のなかで流れをつかみ、自分の状態を変えていく必要がある。
このように混沌とした情報のなかから、法則性を見出し創造的に対応していくことは、あたらしい【セマンティック(意味論的な)情報】を生成していくことを意味している。

○「システムが完結し、内部の論理【セマンティックス】が固定されると、環境への対応力を失う」P340
生物は、複雑な環境のなかで生き続けるために、情報を生成し続ける必要があり、これができなくなれば“死”を意味することになる。






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テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

科学エッセイのなかでは親しみやすいことからも特別な存在。科学の面白さが伝わる文面です。そのなかから一番最初に出版された『ダーウィン以来』をご紹介します。

■ダーウィン以来■

【ダーウィン以来】【パンダの親指】【ニワトリの歯】【フラミンゴの微笑】【がんばれカミナリ竜】【八匹の子豚】など書店の科学書コーナーで見覚えのある方も多いはず。エッセイ毎に読み切りなので気軽に読める

この本のエッセイは、1974^77年にアメリカ自然史博物館発行の【ナチュラル・ヒストリー・マガジン】のコラム“This view of Life”として毎月連載された。題名はエッセイのなかの一つからの引用で、エッセイ毎いろいろな話題が盛り込まれている。一般読者に、時の話題を反映したエッセイ、野球の話題なども折り込んだ魅力的な文章は人柄が反映され今もファンが多い。

「惑星、地球の歴史から社会、政治まで範囲は広いが、【ダーウィン】の進化論という共通の“糸”で結ばれている」“This view of Life”が、科学的知見の限界と教訓とを把握する助けとならんことを願い連載された。「われわれは一体なぜここに居なければならないのか」を問いつづける必然からでもある。(プロローグより)
★“This view of Life”は【種の起源】の最後の一節から引用されている。
★1977年以降も連載が続き、一度の休みもなく1984年4月号で100回。最初に挙げたエッセイ集が連載時期ごとに出版されている。惜しまれるのは、2002年5月に病に倒れ帰らぬ人となったこと。

一般書として【ワンダフル・ライフ】【人間の測りまちがい】などがあり、学者としてもサイエンスライターとしても超一流の評価がある。
ポピュラーサイエンスの啓蒙に尽力したのは、「教育により世界が変えられると信じていた」ことが大きな理由。「科学に名を借りた偏見、嘘が無視できない」こと、「科学の魅力を多くの人に知ってもらいたい」ことも理由の一つに挙げている。

科学の面白さが伝わる文面で、さらに科学の世界に引き込まれる。
科学エッセイのなかでは親しみやすいことからも特別な存在。

そのなかから一番最初に出版された『ダーウィン以来』をご紹介します。
どれもこれも引き込まれる面白さ、発見に溢れたエッセイお薦めです。


【ダーウィン以来】【パンダの親指】【フラミンゴの微笑】は文庫版になり、価格も手ごろ。

★詳細はこちら↓
ダーウィン以来

ダーウィン以来

価格:840円(税込、送料別)


スティーヴン・ジェイ・グールド著
浦本昌紀(うらもと・まさのり)・寺田鴻(てらだ・ひろし)訳
1995.09.30.発行
ハヤカワ文庫 NF196


★★★★☆ 難易度
★★★★★ 蘊蓄度
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★★★★★ 総合評価


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◆《感銘・共感・知見の一文》◆

○「生物の寿命を計る【惑星日】」P109
【惑星日】はすべての生物の考察で、時間を測定する方法としてふさわしいとは限らない。動物ごとの代謝や発育に基づき、相対的に測定して初めて正当性がある。小型の温血動物は、大型の温血動物より速いペースで生きる。鼓動、代謝は非常に速い。相対時間のいくつかの基準からすれば、すべての哺乳類はほぼ同じ長さ生きる。(一生の呼吸数はほぼ同じになる)

◎「“ルアー”を身に付けた二枚貝【ランプシリス・ウェントリコーサ】」P157
淡水産のイシガイ科の二枚貝【Lampsilis ventricosa】のもつ“疑似魚”。目の模様、尾ヒレのつくり、まるで本物そっくりの疑似の小魚を身につける。☆まるで“ルアー”それも精巧な細工を施した高級品!
この疑似餌を捕らえようと近づく魚に、“幼生”を放出する。魚に飲み込まれた幼生は、鰓に棲みつき成熟する。多くの二枚貝は、卵を水中に放出し体外で受精して発生をはじめるのに対し、このメスは卵を体内に持ち続け、オスが水中に放出した精子で受精し、“育児嚢”の役割のある器官で発生する。
【ランプシリス】はこの器官が疑似魚の体になっている。精巧なつくりだけでなく、魚のような動きさえする。幼生期に魚の鰓で発育するために、獲得した器官だが、ではどのように?一体全体どうやって進化?適応したのか?
ダーウィン進化論における深刻なジレンマの一例。
 
○「生物の発生と【シグモイド曲線】」 ★Keyword=【シグモイド曲線】  P194
古生物学者 J・J・セブコスキは、生物の多様性の増大を【先カンブリア紀後期】から、爆発的多様性の終わりまでの時間に対するグラフにすると、一般的な成長モデル、いわゆるS字状曲線【シグモイド曲線】に一致することを発見した。
培養基中でのバクテリアは、分裂を繰り返し増えていく、はじめはゆっくりと、ある程度の数になると指数関数的に増える。これが無限に続かないことは明らかで、スペース、養分、排泄物のため、ある一定の個体数に落ち着く。ここで指数関数的増加は天井に達し【シグモイド曲線】は完結する。
★バクテリアのコロニーの成長と生物の進化はかけ離れているが、【シグモイド曲線】状の成長はある種のシステムの普遍的な特性に当てはまる。

◎「勝ち残る理論のたどる3つの段階」P243
【ダーウィニズム】が新しい正統思想として席捲していた19世紀後半に、精鋭な反対者であった発生学者カール・エルンスト・フォン・ベーアは、「勝ち残ったすべての理論は3つの段階をとるものだ」と皮肉をこめて喝破した。
1.最初は正しくないとして退けられ
2.宗教に反するものとして拒否され
3.最後にドグマとして受け入れられる
科学者たちは、自分は前々からその正しさを理解していたと主張する。というもの。
★【種の起源】【大陸移動説】などなど、はじめは嘲笑的に扱われ、10年もして真実であることが認知されると、今度はこれを否定するものが嘲笑される。


◆《ポイントひろい読み》◆
大きさと形、【体積】と【表面積】の関係を、ヒト、昆虫、構造物で実例を上げながら比較している。
脱皮、大人と子供の差、SF映画など身近な例でナルホドと分かりやすく語る。
グールドの読みやすさ、親しみやすさが汲み取れる記事を集めました。

◎「大きさと形」P260
動物体は物理的な物体である。そのため【自然淘汰】により最も適した形態につくられている。
物体に作用する基本的な力の相対的な強さは、物体の大きさとともに一定の規則性をもって変化するので、動物も形態を規則的に変えることで対応している。
◆【体積】と【表面積】
大きさが大きくなると、体積に対する表面積の比率は減少する。
【体積】は長さの3乗に比例して増加
【表面積】は長さの2乗に比例して増加
このため、大きくなれば、体積は表面積より急速に増えていくことになる。
★大型動物の骨が、小型動物の細い骨と相対的に同じ強度をもつには、不釣り合いに太くなる必要がある。(これは【ガリレオ】により、1638年の【新科学対話】で初めて認められた。)

 昆虫:呼吸・重力
昆虫の呼吸は、肺ではなく体表面の気管から酸素を取り入れ呼吸する。このため大きくなるには、表面積を維持する必要がある。表面積は長さの2乗に比例でしか増えないので、おのずと大きさが限定されることになる。
昆虫に作用する重力は、表面付着力により簡単に相殺される。このため、放り投げたとしても空中に“浮きながら“ゆっくり着地する。体表面に作用する摩擦力が、弱い重力の影響に打ち勝つため。

 昆虫が小さいもう一つの理由:脱皮
昆虫が脱皮して新しい【外骨格】をつくるが、脱皮した後しばらくは支持構造がないため“柔らかいまま”維持しなければならない。小さな昆虫だからできる重力の世界。また近縁のエビ、カニは、水中にいるため重力がほとんどかからない世界での脱皮。

 ヒト
ヒトのような大型の動物は、相対的に【表面積】が非常に小さいので、体重に作用する重力によって支配される。
これに対し、体積に対する表面積比の高い非常に小さい動物の場合、体重は無視できる。
表面積が支配する世界に生きており、快適さ、危険の判断など我々ヒトには実感として経験できない。
★SF映画の「ミクロの決死圏」など小さくなる世界や巨人になる世界は、この大きさと形の関係が反映されていない。形態にとどまらず、運動能力も違いが出てくる。小人がつるはしを使っても、我々のような作業にならない。

 子供
ある状況下では、運動エネルギーは体長の5乗に比例して増加する。
自分の背丈の半分の子供が、高い所から落ちると、自分の半分ではなく、1/32のエネルギーで頭が地上にぶつかる。子供は“柔らかな”頭よりも、大きさにより保護されていることになる。
逆に、子供の腕力は我々が動員できるエネルギーの半分ではなく、わずかに1/32。なぐりかかられても大事に至らない。

 大人
ヒトの技能や行動は、うまく我々の大きさに調和している。
もしも、背丈が2倍になると、落下時の運動エネルギーは16^32倍、体重も8倍で脚の支えられる限度を超える。
もしも、背丈が1/2になると、大型の動物を狩るに足るだけの力で棍棒を振れなかったことになる。
(運動エネルギーは1/16^1/32
★これらのことは、ヒトの歴史的発達において基本的活動であったため、ヒトの進化の筋道はこの大きさに近くなければなし得なかったと結論付けるしかない。

 建造物
中世の教会は、大きさと形の関係について恰好の検証の場を提供している。
縮尺モデルの教会を実際の大きさで建築すると、外壁と窓の面積は長さの2乗に比例し増加するが、光が届かなければならない容積は長さの3乗に比例して増加する。このため大聖堂の内部は必然的に暗くなる。


◆《チェックポイント BEST 5》◆
ここは少し上級編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

◎「この世界はダーウィン以来変わってしまった」P15
【自然淘汰】
見かけ上は単純な理論だが、西洋思想、宗教へ及ぼす影響は、はかり知れない。
【ダーウィン】の投じた一石は、波紋のように広がり、ここを契機に世界は変わる。思想も変わる。人類思想史の“ターニングポイント”という意味合いが込められている。
【ダーウィン】の進化論 P15
1.『進化には目的がない』
  諸々の個体は、その遺伝子を代表するものが未来の世代のなかに増加するように努力する…これだけである。
2.『進化には方向性がない』  不可避的により高次の存在へ向かうのではない。
  諸々の生物は、自分たちのすむ局地的な環境によりいっそう適応するようになる…これだけである。
3.『自然を解釈するに際し、一貫して唯物論哲学を適用した』  物質があらゆる存在の基盤である。

◎「【進化(evolution)】の言葉の歴史」 ★Keyword=【evolution】 P48
【ダーウィン】【ラマルク】【ヘッケル】は、進化について論じた学者だが、意外にも代表的な著書の初版では【evolution】という言葉を使っていない。
【ダーウィン】がこの言葉を使わなかった理由は、
1.ホムンクルス説(胚は卵子、精子の中にあらかじめ閉じ込められている“小さな人間”で、ロシアの“マトリョーシカ”のように“いれこ”状になっている)のことを指す言葉としてつくられたため。ところが1859年には、この説は廃れ、【evolution】という言葉は他の表現として利用できる環境になった。
2.日常語で【evolution】という言葉は、進歩【progress】の概念と結びついていた。
★後に『変化を伴う由来』を表現する言葉として⇒進歩という意味をもつ日常語【evolution】を選んだことで誤解が生じることにもなる。
★【進化】と【進歩】が必然的につながっているとする考え方は、人間を中心に考える偏見のなかで最も悪質。なかでも、多くの人は、【進化】と【進歩】を同一視し、“改良”と思いこんでいる何らかの変化として定義してしまう。
★【種の起源】最後の最後で、しかも名詞ではなく動詞として1か所使われている。
「生命は^かくも単純な発端から^無限の形態が生じ、いまも生じつつある(have been,and are being evolved)」

◎「ヒトの【脳】【幼形成熟】」 ★Keyword=【幼形成熟】 P103
【ヒト】進化にとって、発育遅延は基本的な出来事。
哺乳類のなかでも【霊長類】にその傾向があり、ゆっくり成熟し、長く生きる。そのなかでも【ヒト】に顕著である。
【アカゲザル】の脳は、出生時に最終の大きさの 65%
【チンパンジー】では、40.5%で【ゴリラ】とともに生後1年目に70%に達する。
【ヒト】では、わずかに23%。生後3年目にして70%に達する。
★【ヒト】が最も長い乳児期、幼児期、少年期をもち、【幼形成熟的】に長期にわたり成長する動物で、生涯の30%が成長に費やされる

◎「【タケ】の開花と【周期ゼミ】」 ★Keyword=【捕食者飽食戦略】 P145
【マダケ】120年ごとに開花し結実する。1960年後半に、日本、英国、アラバマ州、ソ連など遠隔地でも同時に開花。【タケ】のほとんどが、同期に開花(15年以下は非常に少ない)する仕組みは、遺伝的体内時計に違いないとしている。
そして、光が時計の役をしているのではと思われる理由は、緯度5度以内の地域(年間を通じ1日の日照時間に差がない)に周期性のある【タケ】がないことから。
【周期ゼミ】(13年、17年の2種の周期がある)★ずれも素数、このため【素数ゼミ】とも呼ばれる。
【17年ゼミ】には個別に3種あり、地域ごと同時に発生する。
★【タケ】の種子と【セミ】が採用する戦略は非凡。非常に捕食されやすいため、非常にまれに発生し、しかも極めて大量であれば、【捕食者】は食べつくすことができない。進化物理では【捕食者飽食戦略】と呼ばれる。この仮説は実証されていないが、説明できる基準を満たしている。
★さらに、アダム・スミスが、調和のとれた経済への確実な道筋【レッセ・フェール】として、自由放任政策を唱えた時に直面した問題に類似していると指摘する。
理想的な経済は、秩序立ちバランスが取れたものと見えるが、自分自身の最大の利益のみを追求し、それ以外の道には従わない諸個人の相互作用から自然にあらわれてくるはずである。(1つの“見えざる手”の作用を反映しているだけ)

○「【ダーウィン】が説明不能としていたカンブリア紀の生物の爆発的多様化」P181
【種の起源】最終版で「この例は目下のところ説明不能としなければならない。そして、私の見解に反対する正当な論拠とされるかもしれない」と記している。
【カンブリア紀】に多くの生物が同時に発生し、しかも最初から複雑であったことが当時の化石から知られていた。現在、【先カンブリア紀】の化石、オーストラリア【エディアカラ】で発見された化石などを手に入れたが、【カンブリア紀】の爆発的多様化が解明されたわけではない。




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テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

一筆書の線画の匂いを嗅ぐネコ、体を丸め身を守るハリネズミ、動物の行動から認識する世界がこんなにも違うことが見えてくる!理論的な話は流し読んで、気楽に楽しみたい本である。

■動物と人間の世界認識 ■

「われわれ人間は本当に客観的な世界を見、客観的な世界を構築しているのだろうか」
大変興味を引くテーマである。

しかし、「環世界」「イリュージョン」「唯幻論」など抽象的な言葉が並ぶと、理屈っぽく聞こえてきて、思考はフリーズしてしまう。哲学的な、概念的な要素が多く、ややこしくなるとまたまた機能停止になる。
理論として読み込む気のない私は、それぞれの生物が同じ環境の中で「現実に何を感じ、何を認識しているのか」こちらの方に興味を持ち読み進んだ。(正直、読み込むには能力不足なのでこうするしかない)

具体的な動物の行動に、重点を移して読んでみると、今まで気がつかなかったことや考えてみもしなかった事例がたくさんあり、なるほどと面白く読み進めることができる。同じ環境にいながら、動物それぞれで認識する世界が違うことが、具体的でナルホド面白く見えてくる。そして、最初にあげた“テーマ”が大変怪しいものであることに気がつく。こうしてみると、ヒトとしての自分の世界認識と、他の生物、動物の世界認識の違いがとても新鮮で、興味深いものとなる。

『動物は、それぞれが持つ知覚の枠にしたがって、自分にとって意味のある世界を構築し、それを認知し行動することで生きている。この世界の認識は、すべてある意味での【イリュージョン】の上に立っていて、何らかの【イリュージョン】による現実の主観化がなければ、世界の認識は起りえない』
この文、何とかならないものだろうか? もう少し表現を工夫して、平たくわかりやすく書けないものだろうか?難しいことを難しそうに書くより、やさしく書くことの難しさがある。私などは、こう表現されると、理屈をこねているように感じ、食傷気味になる。
これこそ私の【環世界】には存在しないものとなるのである。


★詳細はこちら↓
動物と人間の世界認識



日高敏隆(ひだか・としたか)著
2007.09.10.第一刷
株式会社 筑摩書房

★★★★★ 難易度
★★★★☆ 蘊蓄度
★★★★★ お勧め指数
★★★☆☆ 保存版
★★★☆☆ 編集、構成
★★★★☆ 総合評価
 
◆《感銘・共感・知見の一文》◆

○「動物にとって意味のあるもの」 ★キーワード=【ユクスキュル】【環世界】 P38
周囲の環境の中から、自分にとって意味あるものだけを認識し、組み合わせることで世界を構築している。食物としても敵としても意味のないようなものは、その生物の世界に存在しない。大切なのは客観的な環境ではなく、主体が意味を与え、構築している世界である。
★動物行動学の先駆的研究家である【ユクスキュル】は、この世界を【環世界】と呼んだ。

○「【イリュージョン】の意味」 ★キーワード=【イリュージョン】 P15
【環世界】は客観的に存在する現実のものではなく、その動物主体によって客観的な全体から抽出、抽象された主観的なもの。これを【イリュージョン】(幻覚、幻影、幻想、錯覚という意味も含めて)と日高氏は呼ぶ。

◆《ポイントひろい読み BEST 5》◆

○「動物それぞれの【環世界】5例」
【ネコ】P22
マジックインキで描かれた、一筆書きのようなネコの線画を見せると、鼻先をつけクンクンと匂いをかぎ、ネコでないことがわかると即座に関心を失う。平面的に描かれた、机、椅子、にも、ネコは寄ってきて匂いを嗅ぐ、本物であると認識しているような反応をする。
三次元的なもので周囲を認識しているのではく、クンクンと匂いを嗅ぎ、そこで最終的にその実態がわかるらしい。ネコが認識している世界は、我々からすると何ら現実でなく、客観的なものでもないらしい。
 【ナミアゲハ】P51
【ナミアゲハ】は、日のよく当たるこずえに沿って飛ぶ。
両側に木が茂っていても、たまたま右のこずえに日が当っていれば、【ナミアゲハ】はここに沿って飛ぶ。見ていると、いつもきまった道を飛ぶことになる。それだけのことである。
◆ 【モンシロチョウ】P55
草原に木が点在していると、我々は全体として見ることができる。しかし、【モンシロチョウ】にとって、木は存在していないに等しく、大事なのは日のあたっている草原。幼虫は、アブラナ科の草の葉を食べる。卵もここに産むし、新しいメスが出てくるのもこの場所である。
【ハリネズミ】P70
地響きのような鈍く大きな音がした時は、敵に相当する大きな動物が近づいてきたことを意味する。瞬時に体を丸め、身を守る。オオカミなど大型動物には有効であり、生き延びることができたが、車に対してはうまくいかない。かって有効であった彼らの【環世界】は、いまや非常に危険なものとなってしまった。
【ニワトリ】P74
ヒナの脚に紐をつけ、杭に縛っておくと、ヒナは動けずに鳴く。すると親がとんできて助けようとする。ところが、そのヒナをガラス鉢で覆い、匂いも音も漏れなくすると、必死で鳴いているヒナの姿は見えるのに、親は全く知らん顔。親にとってヒナの姿に意味はなく、意味のあるのは“鳴き声”であった。
★動物の【環世界】は、現実の客観的なものというよりは、【イリュージョン】が作り上げた世界である。【イリュージョン】により自分の世界を構築し、その中で生きている。

◆《チェックポイント BEST 3》◆
ここは少し上級者編、ひろい読み編が気に入ったら次はこちらで、チョット深読みしてはいかがでしょうか。

◎「【ユクスキュル】の【ダニ】の世界」P34
生物学で【環境】というと、ある生き物の身の回りにあるものを環境ということになっていた。しかし、【ユクスキュル】は、これを否定する。
『【ダニ】の話』
森の茂みにいる小さな【ダニ】、目がないので、皮膚に備わる光感覚を頼りに灌木の枝先によじ登り、たまたま下を通る哺乳類の皮膚から発散される【酪酸】の匂いをとらえ下へ落ちる。あたたかいものの上に落ちたことを知ると、触角により、毛の少ない場所を探し血液を吸う。生理学的には、「光」「匂い」「温度」と触角の機械的反射行動。
★「哺乳類の発する臭い」「その体温」「皮膚の接触刺激」の3つだけが【ダニ】にとって意味を持つ。この3つで世界が構成されていることになる。

○「昆虫の性フェロモン」P114
【カイコガ】のオスを誘引する物質は、わずか10のマイナス14乗グラムでオスを興奮させる。化学構造は、比較的簡単で炭素が10^20の単純な【炭化水素】このため分子が軽く遠くまで届く。
数十キロ遠くで放たれたオスが、フェロモン源へ飛んできた。遠くにおけるフェロモンの分子は空気1ミリリットル中に1分子、昆虫の触角の臭覚細胞は、たった1分子を感じることができる。
★性フェロモンは、このあたりにメスが居ることを伝えているため、オスは最終的に匂いではなく、姿を探して飛びついている。

○「動物の種により異なる【環世界】」P126
人間は、【赤】から【スミレ色】までの色を見ている。それらの色が均等に反射された色を【白】と認知する。しかし、多くの昆虫は、【赤】が見えず、【黄】から【紫外線】までを光として見ている。ということは昆虫にとっての【白】とは、【黄】から【紫外線】ま出を含んだ光が均等に反射されている色になる。
ほとんどすべての昆虫は【紫外線】を見ることができ、【赤】を見ることができないことも確かである。
しかし、アゲハチョウは【赤】が見える。【紫外線】から【赤】まで見えるので、【白】は、モンシロチョウとまた違う色となる。
★このように考えると、それぞれの動物が構築している世界があるだけで、【環世界】は動物の種によりさまざまに異なっていることになる。



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プロフィール

Author:Dr.kusaichi
日頃より、身近な科学に興味があり、新書などいろいろ読み漁り、また読み耽っています。
そんな中から、選りすぐりのお薦め書籍をご紹介します。

植物の本、昆虫、小動物、菌類からウィルスまでいろいろ登場予定。
科学の本 身近で分かりやすく、肩の凝らない本が中心。
最近話題の本も登場、その他 私の勝手にいろいろ出てきそうです。
気軽に楽しんでいただけると幸いです。

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イモムシハンドブック





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冬虫夏草ハンドブック




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◆【日本の桜】
サクラ、栽培品種から、モモ、リンゴまでわかりやすく分類。 写真が鮮明で桜の季節に、必携の図鑑。



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◆【日本のスミレ】 
山渓ハンディ図鑑⑥
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日本のスミレ増補改訂




◆【日本の野菊】 
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◆【樹に咲く花】離弁花①

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◆【樹に咲く花】離弁花②

樹に咲く花(離弁花 2)2版


◆【樹に咲く花】合弁花他③

樹に咲く花(合弁花・単子葉・裸子植物)改訂第3版


◆【野に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑①


野に咲く花


◆【山に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑②


山に咲く花4版


◆【高山に咲く花】 
山渓ハンディ図鑑⑧


高山に咲く花


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